太閤恋する七冠王
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『ぅんん~~♪美味しかったわね~!今のイタリアン!ね、美和子!』
「そうね!でも加奈はちょっと食べ過ぎかもね?」
『いいじゃないのよ、非番の日ぐらい羽目を外したってー?……それに気持ちがどよーんと沈んでいたしね………』
そう、今日は非番の日で親友の美和子と久方ぶりに重なりこうして東都市の多くの人々が賑わい集う繁華街にショッピングに出掛けています
まずは腹ごしらえと提案しとある老舗のイタリアンレストランで食事をとった自分の判断に深く褒め称えたい
思わず食べ過ぎてしまったが……
「なにかあったの?」
『彼氏のことでね……、ここ数ヵ月お互い都合が合わなくて全然会えないの……ハァー…………、ハァーー……』
「2度も溜め息!……そうとう堪えてるわね、加奈?」
それはそうよ!
「で?レストランで話してた彼氏から貰った封筒の詳細、いい加減おしえなさいよ!そのこと聞いたらニヤけて照れて、でもあとでさっきみたいに深い溜め息ばかり教えてもらってないんだから!」
『う、うん……数年前に彼氏から私に封筒を押し付けてきてね、7つ揃うまで開けないでください揃ったら連絡しますからって言われたんだけど……○月☆日だったかな?その日にやっと揃ってね約束通り開けたの、彼の前でね!中身なんだと思う?』
「ちょっと、また焦らす気!?」
怒りながらも呆れ顔に笑う美和子を可愛いと思った
「うん~?数年前に加奈に封筒を渡して、約束を果たせたら連絡するっていって、それが漸く成し遂げ加奈がその中身を知ってこんなにも歓喜している……それって…婚姻届しかないわよね!」
『あっ、たり!!よくわかったわね美和子?』
「ホラ、よくあるじゃない!自分の名前はもう書き込まれててOKなら貴方の名前を書いてくれってヤツ♪……ん?でもなんで加奈そんなに落胆してるの?封筒の中身みたんでしょ?彼と?」
あら?なのにどうして加奈は落ちこんでいるの?
『うん、彼の前で婚姻届を書いたよ///……でもまだ役所に提出してないの。今度私の両親に改めて挨拶してから一緒に出そうってなってたんだけど……なんの悪戯か、お互い都合が……』
「なるほどね~、だから溜め息ばかりついていたのね~。」
『まあね……!……あ!美和子みてみて!あそこでショートケーキ売ってるよ!』
視界の先にケーキを移動販売するキッチンカーを発見!
ケーキ好きな私にはたまらなく美和子の手を引いて寄った、陳列している様々なケーキ達を眺め、どれにするか悩むが1番好きなのはやっぱりショートケーキ!
その隣に……
『1日15個販売限定のプレミアムチーズケーキだって!………そーいえば、昔よくチーズ食べてたわね、チュウ吉』
「チュウ吉?それが彼氏の名前なの?」
『あっ、……違うよ。昔に呼んでいたあだ名なんだけど、彼が嫌がって今は全然呼んでないけど、たまに無意識に呼んじゃうみたい。すみませーん!ショートケーキ2つ下さい♪』
『しゅ、チュウ吉!いい加減チーズばっかり食べないで、甘い物にしたら?ケーキとか!』
「チュウ吉?……??……え~~と、加奈タン?チュウ吉って僕のこと?」
『ええ、そうよ。私のことをそう呼ぶように私も秀吉さんのことそう呼ぼうかと…』
「い、嫌だよ~!加奈タンには今まで通り名前で呼ぶように、絶対に!お願いだよ!」
クスクスッ…あの時の焦り嫌がってた秀吉の顔、おもしろかったな~♪
持ち帰りでケーキを購入し次はどこに行こうかと歩き出す
「へぇ~、その彼どんな人?何やってる人なの?」
『私も最初なにやっているか知らなかったんだけど、その人はしょう……』
《次のニュースは熱戦が続いている王将戦……》
横切ろうとしていたデジタルサイネージのビルにて美和子に恋人の事を告白しようとした時、アナウンサーの女性がニュースを告げている言葉に立ち止まりそのモニターを見上げて、"あ……"とポロリと言葉を溢す
《3勝3敗で7戦目にもつれ込んで最終局の1日目が終わり……羽田秀吉名人が七冠を維持できるかどうかが注目されています…》
「ん?あ!太閤名人じゃない!今、CMやクイズ番組に引っ張りダコなんだよねー!」
ムスッ
『そ、そりゃそうだけどだからって秀吉を振り回さないでほしいわ!そのせいで両親に会いにいけないし婚姻届、一緒に出しにいけないし……わたし彼の両親への挨拶だってまだ』
ピクッ
「加奈……今なんて」
『だからわたし彼の両親に挨拶にまだ行ってない……「そこじゃない!最初の方よ!」え?…だからって秀吉を振り回さないでほしいと……』
その瞬間、美和子の顔色は変わり
「秀吉って……え?え!?まさか加奈の彼氏って……太閤名人だったの!!!?」
絶叫の響きがこだましたように叫んだ美和子
『あはは……実はそうなんです////』
「じゃあ、7つ揃ったらて将棋の7大タイトルのことだったのね!まさか加奈の恋人が太閤名人だったなんて、もうビッグニュースよ!!で、で!その封筒、今どこにあるの!見せて見せて!!」
『それなら!いつも気になるファッション誌の服のページにしおり代わりにして挟んで大切に…大切に……、…っ、………ぁ、ぁぁっ………』
サァッ-……………
と、途端に嬉々として話していた加奈の顔色は青ざめ私をおいて走りだす、加奈を腕を掴み引き止めた!
ちょっと、ちょっと!どうしたっていうの!?
「加奈、どうしたのよ!!」
『ど、どど、どどどうしよーー美和子!わたし今朝、あやまって他の本とまとめてゴミ捨て場に捨てちゃったみたいーーー!!!』
「え?……えぇえええぇーーーっ!?!」
* * * *
急いで一人暮らしで住んでいるマンションに駆け付けてそこのゴミ置き場の前で膝に手を付き息苦しい呼吸を吸って吐いてを繰り返してから確認すると確かに出したはずの本の束がなくなていたことに私は涙目になるしかない
『どうしよ~~っ!大切な婚姻届を捨てちゃうなんて!!』
「まぁ、正直に話してもう1度書いてもらったら?仕様がないし……」
『ダメよ~、秀吉さん妙な所で頑固者で……昔に無くした時用に予備の封筒くれる?って尋ねたら"ダメです!あれはこの世で唯一の代物!予備なんてありません!"って告げてたから!』
本気でどうしようと頭を抱えていたとき!私達の前に5人の救いの小人が現れた!
謂わずもあの子供達
私と美和子はカクカクシカジカと話すと、美和子が一目する眼鏡の男の子が
「ん~??でも今日は資源ゴミの日じゃないみたいだよ?なのに雑誌の束がここにないってことは、このマンションの管理人さんがどっか別の場所に保管してるかもよ?加奈さんのゴミだってわかってたんなら加奈さんの部屋の前とかにね。」
『そっか!そうかもしれないね!』
この子……ほんとスゴイ!!
* * *
そうあっとほしいと願い早足で私の部屋扉前に訪れるとあの子の推理通り……
『あったーー!!よかった!えっーと挟んだのは確か………』
「でも管理人さん、よくわかりましたねぇ?加奈さんのゴミだって」
「長い間、管理人をやってたらわかるんじゃねーか?その住人がいつも買ってる雑誌とかで?」
『ない!無いわ!!どこにも無い!!間違いなくこの雑誌のこのページに挟んで……』
「ちなみに何を探しているんですか?」
「実は加奈、大切な封筒をしおり代わりにファッション誌に挟んでたんだけど、あやまってそのファッション誌と一緒に束ねて出しちゃったみたいで……」
「ああ…婚姻届が入った例の封筒ね。」
子供達にもバレてる……
「その封筒って何か書いてあったの?」
『裏の貼り合わせの所に"封"って文字と、表に"羽田秀吉"って名前が書いてあったわよ?』
「じゃあ!どこかの女の人が拾って妻の欄に自分の名前を書いて区役所に出しちゃっているかも!」
「ウソ~!!」
「まあ、旦那が太閤名人なら私だったら心が揺れるわね。」
『ふえぇっ!?』
「冗談よ…」
そんな事に陥ったら秀吉さんに合わせる顔がない!あれ?でも妻の欄にはもう記入して……だけど破り捨てられでもしてたらどっち道同じで!
「とにかく管理人さんに会って話を聞いてみようよ!もしかしたら大切な封筒だから預かってくれてるかもしれないよ?」
まだ諦めちゃだめよね!と気持ちを保ち管理人さんの号室のチャイムを鳴らしたら、留守ではなかったようで安心した
『あの、八塚(はちつか)さんこの度はすみません……それでそのゴミのことで聞きたい事が』
ちょっと待っとれ…と言われ待っていると漸く開いた扉から私と面識がある60代後半のお爺さん、このマンションの管理人さんだ
「やっと来おったか…茶々め……」
『その呼び方、なんかイヤのでやめてくださいっていてますよね?』
「チャチャって?どういう事?」
『教えてくれないのよ!!前に秀吉さんがウチに遊びに来た時にこの管理人とバッタリ会ったんだけど、それ以来わたしのことを茶々って呼ぶようになって…』
あの時からずっとわたしのことを言うようになって、なんだか人当たりが悪くなったような?
「もしかしてお爺さんって将棋好き?」
「ああ!プロ並みじゃと思うておったわ。じゃが思い知らされた、10数年前デパートのイベントで中学生のプロ棋士が来るというんで行ったんじゃ。中坊如きコテンパンにしてやるとな?まあ、逆に完膚無きまでにやられてしまったわけじゃが」
と語り、八塚さんが秀吉さんと面識がありファンだったことを初めて知る
「彼がタイトルを取る度に我が事のように喜び悠々自適に暮らしておったよ……この茶々に捕まるまではな……」
「捕まるって?」
『えっと、この人スリの常習犯だったのよ。電車の中で私の財布をすろうとした所を捕まえたのは由美なんだけど、刑期を終えて出て来た時に仕事がないというものだからなんとかしてあげようとこのマンションの管理人の仕事を世話してあげたの…って、今はそれよりも私が出した雑誌に挟まってた……「ああ、これの事じゃろ?」!?』
付き出され見せられたのは、まさに私が喉から手が出るほど手にしたいお爺さんのスマホ画面に写されている婚姻届の用紙
これによりお爺さんが封筒を保管してくれていたことに感謝感謝!
しかし、
「はて?どこに置いたかのぉ…奥の寝部屋に置いたと思ったが最近、忘れっぽくってのぉ。」
『じゃあ、探させてもらいます!』
とお爺さんの横を通り部屋にお邪魔して仕舞いそうな引き出しや机の上を一通り探ったが見つからない、この部屋の中にあるのは確かだと言う八塚さんに美和子が"じゃあ、見つかったら返して貰うしかないんじゃない?"と提案するも私としてはとても不安でどうすればと考えていたらお爺さんがそんな時間の猶予はないと言い出す
どういうこと?
「婚姻届の夫の職業欄には"棋士七冠王"と記してあった、あれは尋常ならぬ覚悟と決意を持って書いて書状に相違ないわ!じゃがこの度の王将戦、太閤名人は苦戦を強いられておる。原因は恐らく婚姻届。"大切な人を待たせてばかりで申し訳なく将棋どころではなくなっている"と雑誌のインタビューで漏らしておったからのォ……そうつまり」
ギラリとつり目にあげたお爺さんの眼差しが私に突きつけ衝撃な言葉を告げた!
「このまま王将戦で太閤がタイトルを落とす事あらば…"七冠王"と記されたこの婚姻届は無効になるということじゃ!!」
『ええぇえ?!』
人生最大のピンチ!
「じゃあ、今すぐ電話しなさいよ!結婚しよって!」
しかし対局中の電話はルール上、それは無理らしくもう打つ手ないのかと思うとかなしい……
婚姻届が無効になるかもしれないから悲しいわけじゃない……ずっと約束を守り通してきた秀吉さんを支えたい
可能なら電話をしたい、私なんかの言葉で対局がそう簡単に揺るがないのはわかってる、でもそれでも少しでも秀吉さんを……
「会えるとしたら一旦対局場を離れる昼食休憩の時ぐらいじゃ、そこに婚姻届を持参した茶々が現れれば彼は百万力の力を得ていかなる相手をも蹴散らすじゃろうが…昼食休憩まであと1時間あるかのぉ?」
『!……知っているのね、婚姻届けの在処!どこ!どこに隠したのよ八塚さん!?』
「ならば覚悟を見せてみィ!!」
『か、覚悟?』
「いかなる事があろうと太閤名人と添い遂げる、覚悟じゃよ!!その必死な想いがあれば封筒の1つ2つ見つかるはずじゃ!!」
添い遂げる……覚悟
そう問われ私は胸に手をあててみるが私にそこまでの気持ちはなかったかもしれない
「もしかしてこれなんじゃない?」
とコナン君が発見した婚姻届の在処の鍵
パソコンには8ケタの数字を入力を淀君のみがいれること、チャンスは1度だけ
淀君とは太閤秀吉(たいこうひでよし)の奥方、茶々のことだった
だから私のこと茶々って呼んでたのか~
っていまはそんなことよりその8ケタの数字みつけるためこの部屋に隠されているヒントを美和子と子供達で手分けして探っていたら元太君がひっくり返したゴミ箱から正方形の紙に書かれている図形のような古代文字のような絵柄をみつけるがサッパリで頭のいいコナン君も頭を抱えている
「何かで隠したら数字が見えるかも!」
「でもよー何で隠せばいいんだよ?」
「!……将棋の駒ですよ!暗号の紙の上に将棋の駒をうまく置けば8ケタの数字が見えるんじゃないでしょうか!!」
『そうかも!これ見ようがしに将棋盤があるし……よーし、みんなでこの暗号を解読するわよー!!』
「「「オーー!!」」」
* * *
カコン!……と青竹の鹿威しが仁屋旅館で響いた
その和室にて前に名人戦で対局した勝又(かつまた)さんと羽田秀吉は王将戦に苦戦中だった
「(加奈タン…貴女の返事はしっかり受け止めています。…この対局はその想いを貫かないといけない。でももし、負けたら?いやいや、何を考えているんだ、そんなこと絶対にならない………待たせてばかりの加奈タンをこの対局が終われば、漸く迎えにいけるのだから……勝たないと、絶対に!)」
「羽田名人……随分悩まれているようだが、少し早めの昼食休憩にしましょうか?私はそれでも構いませんよ。」
「いえ、このままで……(そう、七冠を取り万全の態勢で加奈タンを迎えにいく。それが僕の決めた打ち筋…………初志貫徹!!)」
* * *
将棋の駒で解読方法を見つけようと奮闘するも違ったみたいで、するとまたしてもコナンがもしかしたら似たような紙がこの部屋にまだ隠されていてそれを見つけないかぎり駄目なんじゃないかとなり再び探す私は、ふと思い出す
『でもこうやって探し物してると思い出しちゃうなぁ~……タケノコ探し!』
「タケノコ?」
『秀吉さんのマンションに遊びに行った時に私に見せようとしてた大切な扇子がどこにもないって焦ってたから、私がみつけてあげたのよ。』
「何でそれがタケノコ探し?」
『ホラ!扇子って竹で出来てるし、その扇子筆立てに刺さってて先っちょだけしか見えてなかったから……でね、秀吉さんに言ってやったの!"扇子そのものを探そうとするから見つからないのよ、ほとんど隠れてると思えば見つけやすい"って…タケノコだって見えてるのは先っちょだけでほとんど隠れてるんだからってね!』
「!…(思案はタケノコみたいな物で大部分は土の中に埋もれている、これは見た目に囚われず中身を見極める事が最も大切であると説いた稀代の将棋指し阪田三吉(さかたさんきち)の名言!!まさかこやつ、それを知ってて)『恥ずかしい話し秀吉さんがトイレに行ってる時に机の上にあった扇子を筆立てに刺したのって私なんだけどね…』(ただの偶然か?)」
「ああーー!全然みつからねーじゃんか!ん?おぉー!うまそうなケーキあんじゃんか♪食っていいか!」
と私が買っていたケーキに元太君が食いついていて、私はなくなく私の分をあげることにした
『もう1つはダメだからね?もう一個はチュウ吉のだから…』
「ねぇ、加奈?太閤名人って羽田秀吉なのに何でチュウ吉って呼んでたの?」
『秀吉さん偏食だったの。付き合い始めた頃は素手でつかんでも手が汚れないからってチーズばっか食べてて……「ああ、チーズってネズミの好物ってイメージよね?」だから見兼ねて食べさせてあげたのよ!とびっきりの美味しいショートケーキをね♪そうしたら秀吉さんハマっちゃって……』
「そーいえば棋士の人ってよく対局中に甘いデザート食べてるわよね?脳の栄養になるとかで」
「(確か、太閤名人がタイトルを取り始めたのは………対局中にショートケーキをバク食いし始めた頃から……こやつ、茶々かと思うたが、もしや)」
ヒント探しはむなしくも時間が過ぎていくばかり、子供達の興味は薄れて将棋の駒で遊んでいる
「にしてもこの部屋少し寒くない?」
「そうだな、おじいさん暖房つけてくれる?」
「つけたいのは山々じゃが、昨日からエアコンが壊れておってのぉ……すまんが我慢してくれ」
「(え?確か最初この部屋にはいった時、少し暖か買ったから暖房はついていたはず……)」
私はもう一度、暗号のような紙を見つめ直してみた私はあることに気づく
『あの、八塚さん…この暗号本当に八塚さんが考えた暗号なんですか?』
「ああ、そうじゃが。なぜ疑う?」
『だってこの暗号って、直書きでなくて、コピーだから?』
「(え?そうなのか!しまった!すぐに写メで撮っちまったから現物はよく調べてなかったな……)」
『だからこれは誰かが描いた暗号で、それをコピーしたんじゃないって思って……』
「それは正真正銘わしが考え、わしが書いた暗号じゃ、コピーにしたのは気まぐれじゃわい!」
とコナンはこの暗号用紙がコピーされたこと、コピーされたのなら長方形の紙なのにわざわざ正方形に切った訳、コピーにせざるを得なかった真相を見抜こうとしていたら
『だったら八塚さんが書いた暗号なら、ヒントをください!』
「フン、ヒントなんぞなくても太閤名人と夫婦となり添い遂げる気構えがあれば、こんな暗号すぐに解けるわい!真の夫婦(めおと)となる覚悟があればのぉ!!」
夫婦(めおと)?山あり谷あり……あの暗号の紙があったのってゴミ箱の中からで…………!!……そうか!
「ちょっとその紙貸して!」
『え?あっ!ちょっと?!』
コナン君がまた何かに気づいたのか暗号の紙で何かを折り始めた……するとそこに浮かんできた文字…ルートにファイブ?…√ ̄と……5?……パスは8ケタの数字………!!…そっか!
『美和子、22360679で……合ってるよね?』
「た、多分……あ!待って加奈!一応ネットで確認してみましょ?」
私と美和子はわかったみたいだけど子供達にはなんでわかったのか?と疑問を抱いている
仕方がないか小学生だし?でもコナン君と哀ちゃんは知ってたみたいで3人の子供達に教えている
「ノーヒントだったのに、なんでわかったですかー?」
「ヒントはあったじゃねーか?暗号がわざわざコピーされ、その暗号の紙がゴミ箱の中に入ってたのがヒントだよ!コピーしないとバレちゃうモノってわかるか?」
「下書きの跡とか修正液で直した跡とか?」
「んじゃ、さっき俺が折ったこの暗号、コピーしたら消えちゃうモノって何だ?」
と見せた紙に歩美ちゃんが元気に答えをあげた
それは折り目………コピーしたのはこの折り目を消すため、だがしかし何故、紙はゴミ箱の中にあったのか?……これもちゃーんと理由がある
「昔のことわざ…掃き溜めに鶴。つまらない者達の中に飛び抜けて優れた者や美しい者が混ざってる事の例えよ?」
「その通り!掃き溜めっていうのはゴミ捨て場のことでゴミ箱にこの暗号が入ってたって事だからこの紙で鶴を折れってことだから……鶴を折ると、この通りルート、ファイブの文字が出てくるってわけさ!」
「ルート、ファイブって?」
「2乗すると5になる数を5の平方根ルート5って言うんだけど中学や高校生になるとその数を8ケアぐらい覚えさせられるんだ!ルート5だと富士山麓オウム鳴く(ふじさんろくおうむなく)で2.2360679って具合にな!」
コナン君……よく知ってるわね?貴方本当に小学1年生?と耳をたてて聞いていた子供達の会話に衝撃を受ける、でも数字はこれで合っているようで安心してエンターを押すと
『も、もう1つの8ケタの数字を記入せよって…パスワードってルート5だけじゃなかったの!?』
「大丈夫!同じ紙で鶴をもう一羽折ればいいだけだから!」
と折った鶴はルートファイブのような文字が出たのだが……
「今度のはカタカナじゃないみたいだよ?」
「裏も何やら、奇妙な図形ですね?」
「この○に被さってる記号がルートだから○に入る数字が何か分かればいいと思うけどよ?ヒントがこの妙な図形だけだからなぁ……」
『んぅ~ん?でも……この○の下にある図形、なんだかお猪口に見えない?』
「おお?ほんとだぜー!ならもしかして"9"じゃねーの?」
あら?なんで9と思ったの?と元太君の回答に哀ちゃんが問えば
「だって上の○が月で下のが酒をいれるお猪口ならお月見だろ?ツキみながら一杯やりてぇってウチの父ちゃんよく言ってんだけどなぁ?」
『あら、ほんと!そう見えなくもないかも!ならルート9?でも9の平方根は3で8ケタもなかったはず……』
「(一杯……なるほど、そういうことか!!)」
「え?濁点?このお猪口の右上についてる2つの点は濁点だったんですか?」
「濁点ってなんだ?」
『濁点っていうのは…分かりやすくいえば元太君が自分の名前をひらがなで書くとするでしょ?そのとき"け"に2つ点々をつけると"げ"になる……苗字だったら"こじま"の"し"にも同じようにつけるでしょ?これを濁点っていうのよ?』
「あれか!」
と人差し指をたてて私は解りやすく教えてあげた
「でも何でそれで○に入る数字がわかるの?」
「元太と加奈さんの会話から分かったのさ!じゃあ1から数えてみなよ!指は?」
いっぽん、にほん、さんぼん、よんほん?
「ネズミは?」
いっぴき、にひき、さんびき、よんひき?
「飲み物は?」
いっぱい、にはい、さんばい、よんはい?
「もうわかるよな?」
『!!……そっか!(なら2つ目のパスワードは!)』
暗号を解読でき、パソコンに8ケタの数字を打ち込んだ
○に入る数字は3
ルート3は"人並みにおごれや"だから17320508と覚えておけばいい
パスワードを打ち込んだらすぐにエンターを押した瞬間!画面が切り替わり婚姻届の在処を印してなくかわりに映っているのは自分の姿
『ちょっと!なにこれ~!?画面がパソコンの上についているカメラの映像に切り替わっただけじゃない!!封筒は!婚姻届は!』
「よーく見てみィ!!」
『よーく?んん~ん?…………あ、あーー!?私の上着の内ポケットに封筒がある!!やったー♪』
やっと手にした大事な婚姻届に一安心し張りつめた緊張の糸がゆるみ床に座りこんでもう1度私と秀吉さんの詳細が記入された婚姻書を見つめ続けた自分
「なるほど、加奈が貴方を横切った時にもうスリの技で加奈の懐に忍ばせてたのね?」
「(だから暖房を切ったのか…上着を脱がせないために)」
「さぁ加奈!座りこんでる暇ないわよ!その婚姻届を太閤名人に届けなきゃ!王将戦の対局場は神奈川県の仁屋旅館で午後1時半まで昼食休憩らしいから」
『タクシー飛ばせば間に合うよね!』
そのとき!私のスマホに電話が鳴って、その電話相手が秀吉さんからに驚き疑問を抱くも通話を繋げると気迫のない、落ち込んでいるような小声が聞こえた
《もしもし…》
《秀吉さん?いま、携帯って使っちゃいけないんじゃないの?》
《大丈夫です。もう対局は終わりましたから……なので例の封筒は捨ててください。もうなんの意味もありませんから。》
それって……
「うわっ!大変です!!太閤名人が王将戦に負けたってネットの速報が!」
「えーっと、何か別の悩み事を抱えていたような太閤名人は悪手を連発してしまい昼食前にあっさり勝負が決したらしいわね。やっぱりそれって婚姻届よね?」
秀吉さん……ごめんね。早く会いにいけなくて側にいてあげられなくて、悪いのは貴方じゃないわ
《秀吉さん、あのね!》
《初志貫徹……僕の義理の兄であり最も尊敬する羽田浩司という棋士が、座右の銘にしていた格言です。》
《羽田…浩司さん?》
《すみません、加奈さん……男が1度決めた事は曲げたくないんですよ…》
初志貫徹……初めに心に決めた志を最後まで貫き通すこと、"初志"は思い立ったときの最初の気持ちと志で"貫徹"はやり通す、貫き通すこと
私に封筒を渡した時から秀吉さんは初志貫徹して偉業を成し遂げようとここまで頑張ってきた
けど、この度の王将戦に敗れてしまった彼は電話越しでもわかる、弱々しく堪えている
そんな彼に私は……
《あ、そう………》
ビリッ!!
《!?…》
と封筒の中にある婚姻届ごと破り、その音は秀吉さんにも聞こえている
小さくなるまで破り続けた婚姻届は紙吹雪のように舞い落ちていく
《(加奈タンっ……ずっと待たせてばかりの僕のことなんて、もう…………)》
別れを切り出されるかもしれない、その前に切ってしまいたい電話に僕は甘んじて受け入れるしかないく彼女の言葉を待った
涙腺がゆるみ涙が目に留まる
きっと別れ告げられたとき、この涙が零れ落ちるのだろう
もう加奈さんの柔らかな声も、その声で僕の名前を呼ぶことはなくなり、想い描いていた僕と彼女との未来は………
《秀吉さん……》
《…っ………》
《私……貴方のそーいう所、好きよ?》
《………、え?》
《真っ直ぐで、約束を果たそうとしてくれて、あまり会えない私を未だに好きでいてくれて……》
《でも…僕は……約束を破りました……加奈さんを迎えに行けず……》
《私、いつまでも待ってるよ?秀吉さんのこと………1年でも3年でも5年でも待ってる……だから自分の決意を通せばいいの。貴方がまた、その7つだか8つを揃えて、天下取ったら、その時は迎えに来てよね?今度こそ…………だから》
スッ……とお腹に空気を取り込んで
《それまで誰にも負けんじゃねぇぞ!!このハゲネズミ!!!》
《は、はい!!!》
ピッ!
『フン♪(……もし、お父さんにあんな言葉使いを聞かれていたら、説教されちゃうわね……ハハッ……)』
「加奈かっこいー!!」
「茶々かと思うたら寧々じゃったとは……カカァ天下が目に浮かぶわい。」
「(っていうか信長?)」
その帰り道……美和子から王将戦は1年に1回しかなく秀吉さんから求婚を受けられるのは早くても1年後らしい
『じゃあ美和子、わたし実家に帰るからここでお別れね?』
「ええ!太閤名人によろしく!」
* * * *
ゆっくりと歩く帰り道、対局が終わって神奈川県に今日は滞在するであろう秀吉さんを想う
夫婦になる覚悟……秀吉さんと添い遂げ続ける強い気持ちはあるのかと問われても正直、私にはそんな大層な自信はなく心の弱い人です
けど私は彼が好き……大好き……側にいたい……ずっと……彼を支えていきたい………
恋人として妻として、だからあの婚姻届に書いたんだもん
ゆっくりと歩いていたため綺麗な夕日が道を照らして実家まであと少し……
『?……』
その先で伸びている影があった
俯いていた私は誰?とそっと頭を持上げて視界にとらえた瞬間……目がはなせない
『……秀……吉さん?、神奈川にいたんじゃ……帰って、来たの?着物のまま?』
「………、加奈さん…」
『っ………秀吉さん…………』
夕日をバックに堂々とした気構えで拳を握りしめ、歩いてくる
その眼差しには決意を新たに私を見詰め一歩、一歩向かってきている
『っ////……』
普段みせない…その凛とした姿に、惚れ直してしまった
彼と夫婦になる……いつか来るかもしれない未来に、私はどうしようもなく焦がれている……でも、それと一緒に不安とともにある
ゆっくりと歩んでくる秀吉さん
私との距離を縮めて
私の手を掴める程まで来ると歩みをピタリと止めた秀吉さんは
「加奈さん………貴女はやはり僕の夫婦(めおと)になるお人です。」
そうハッキリと告げる秀吉さんに私は嬉しくも、不安が途端に募って顔を俯かせ自分の気持ちを正直に応えた
『でも私……秀吉さんを支えられないかもしれない、添い遂げ続けることができなくなるかもしれない。』
「なに言ってるんですか?」
スッ…
『?……!…きゃあっ!?』
ギュウッ!……
途端に掴まれた腕から伝わる彼の手の体温に胸が熱くなった瞬間……腕を引かれ彼の胸の中に閉じ込められ、私の名前を耳もとで囁いた秀吉さんから
「さっきだって支えてくれたじゃないですか?電話での加奈さんの一喝、すごく効きました」
『!?、はわぁわぁわぁわああっ!!いや、あれは!ご、ごごごめんなさい!勢いで言っちゃって!!』
「あははっ♪加奈タンはやっぱり可愛いなぁ~♪」
あ、いつもの秀吉さんに戻った………
『ふふふっ、いつもの秀吉さんね!』
「!……ですね。…………加奈さん」
『はい……』
「初志貫徹……1年後、貴女を僕の妻にします。次の王将戦まで僕は決してタイトルを落とさない!…今度こそ、僕は約束を貫きます。でも待たせてばかりの加奈さんをこれ以上待たせられない………けど、もしこんな僕を待っててくれるのなら、この封筒をもう1度、受け取っ…」
スッ…
『それまで私はこれを大事に持って待ってますから。だから必ず、必ず迎えにきて?約束よ?』
「!…はい……必ず!……」
新たな初志貫徹を伝えられ、私は約束よ?と彼の唇にキスをして誓いをたてさせてあげた
小さくチュッと鳴ったリップ音
今はとても彼の側を離れたくない…そう溢した私の言葉に彼は"僕もです…"と呟いて抱き合っているところを私の母に目撃され、まぁ!…と口溢し微笑んでいた母に秀吉さんはひどく動揺している姿に私はクスリと笑い、彼の背を押して実家に招きいれることにした
「加奈タン!?」
『クスッ……泊まりにきて?秀吉さんの側にいたい////』
「!!……は、はい!!////」
どうしようかと慌ている秀吉さんの腕に抱き付き愛しい彼に……頬を染めて聞こえるように告げた
それに秀吉さんは私と同じように顔を紅潮させて、返事を返すとニッコリと微笑んで私の手を取り指を絡ませてきたことに私はギュッと握りかえした
遠くない未来がみえる……
夫婦(めおと)となり
私達にその未来先に待つもの
きっと幸福の時間が待ってる!
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