第1章 消された王と"兄弟"の謎

「どうしたの?!何があったの?!」

そこに、魔法の音やセシルの叫び声を聞き付けた金髪の女性、ローザがやって来た。

彼女もまた、驚いて言葉を失った。
セシルそっくりの黒衣の男に。

「我が名はゴルベーザ。ここにはクリスタルはないようだな……用はない、と言いたいところだが、」

黒衣の男ーーーゴルベーザはカインにつかつかと近寄る。

「竜騎士カイン・ディスト・ハイウィンド。お前には用がある。共に来てもらおう」

「ほざけ!!」

カインが攻撃せんと槍を構えるが、ゴルベーザがカインに向かい手を翳すほうが速かった。

ゴルベーザが手を翳すと、カインの手から槍が落ち、カインは気絶してしまった。

カインが気を失うと、ゴルベーザはカインを抱えた。

「カイン!!」

ローザが叫んだ。

「カインをどうする気だ!!目的はなんだ!!」

セシルはキッとゴルベーザを睨み据えた。

「竜騎士には、我が目的の為に協力してもらう事にした。クリスタルを集めるというこちらの目的の為にな。もうここには用はない、また会おう。我が弟よーーー」

それだけ言って、ゴルベーザは消えてしまった。

「我が…弟…?」

セシルはバロン王に拾われた2歳の時の前の記憶を失っている。

どこで生まれたかすら覚えていないのだ。

それなのに、突然自分と同じ顔の男が現れ、自分を弟と呼んだ。

セシルの心に靄がかかる。

彼は一体、何者なのだろう?



「カインをさらったあの男……ゴルベーザは、クリスタルを集めると言っていたわね。私達で追いましょう」

ローザが決意を秘めた目で言った。

「カインは、同じ屋根の下でいっしょに育った家族みたいな人なんだもの…必ず助けるわ」

「ああ、勿論だ……でも、まずはどこに行ったらいいだろう…」

セシルが重い口調で言った。

「魔法国家ミシディア。その長老にお会いしてみましょう。世界一の魔法国家たるミシディアの長老ほどの人物なら、もしかしたらゴルベーザの居場所がわかるかもしれないわ」

「そうか……よし、行ってみよう。あてにしてるよ、ローザ」

「ええ」

こうして二人は、バロンをあとにした。

友を助け、クリスタルを守る為に。




一方その頃、ゾットの塔では、ゴルベーザとカインが対峙していた。

ゴルベーザの放つ魔法に、カインは立ってすらいられなくなっている。

「いずれきっと、我が弟が来る……その前に、お前には我が手足となってもらおう」

ゴルベーザはカインに掌を掲げた。

「洗脳という言葉は知っているな?」

ゴルベーザの掌から放たれる魔力が、カインを包み込む。

「我が手足となれ、竜王の息子よーーーー」

ゴルベーザの放つ魔力が、己の内側を侵食していく。

乱される。侵される。

「ぐあああああああッ!!!!!!」


(セ…シ、ル………。)


再びカインは、意識を手放した。
2/2ページ
スキ