第1章 消された王と"兄弟"の謎

ここは世界一の軍事国家バロンの城。

そこを、二人の青年が歩いていた。

「陛下からじきじきに話ってなんだろね~。いっしょに住んでるのに、わざわざ改まってどうしたんだろう?」

白い服に腰に剣を装備した、緩やかな銀髪の青い眼の美青年が、隣を歩く青年に話しかけた。

彼は、聖騎士ーーーパラディンと呼ばれている。

「お前の養父なのだから、わざわざ改まって謁見などという形を取らなくても…いや、気軽に話せる事ではないのかもしれないな。俺まで呼び出すくらいだし」

美しい黄金の髪の、槍を携えた青年がそれに応じた。

着物のような衣装を身に纏い、髪と同じ色の眼には細い瞳孔が目立ち、耳も尖っている。

彼は実は竜なのだ。
しかし、この国の軍人でもある。

ゆえに人は、彼を竜騎士と呼んでいる。

「なんだか緊張しちゃうね…カインがいっしょで良かった~。さすが親友」

銀髪の青年ーーーセシルはふにゃっとした笑顔を見せた。

「俺はなるべく接したくなどないのだがな。父上様の…竜王バハムートの仇になど」

黄金の髪の青年ーーーカインは無愛想に返した。

「そっか…」

セシルはそれだけ相槌を打った。

話してるうちに二人は、玉座の間についた。

「よく来てくれた。セシル、カイン」

「わ~い父様~♪」

ガスッ!!

気を緩めたセシルの頭を無言のカインが肘鉄で殴った。

「お呼びですか、陛下……」

ぶたれた頭をさすりながら、涙目でセシルは言い直した。

バロン王は苦笑しつつ口を開いた。

「わざわざ呼び立ててすまないな、セシル、カイン。お前達に話しておきたいことがあるのだ」

「話しておきたいこと?」

カインがバロン王の言葉を反芻した。

「ああ。今、この青き星ではーーーー…」

バロン王がここまで話した時だった。

彼を黒い雷のような魔力が包み込み、彼の姿が掻き消されたのは。

悲鳴をあげる間もない、あっという間の絶命だった。

「?!」

カインは目を見開いた。

「陛下?!」

セシルも動揺を隠せずにいる。

「何者のしわざだ!?出てこい!!」

セシルは剣を構えながら叫んだ。

すると、音もなくどこからか一瞬で黒いローブの銀髪碧眼の男が現れた。

彼はーーー……


(僕と……、同じ顔?!!)


そう。セシルと瓜二つなのだ。
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