第6章 吟遊詩人と召喚士

その頃、ゾットの塔。

「ゴルベーザ様、いってらっしゃいませ」

ルビカンテが恭しくゴルベーザに頭を下げた。

「うむ」

ゴルベーザはそれに頷いて見せた。

「ゴルベーザ様、ほんとにお一人で大丈夫なんですか?俺ついていきますよ?」

カイナッツォが心配そうにこう言ったのを、ルビカンテは見逃さなかった。

「貴様!自分だけゴルベーザ様に付いていって信頼を得ようとはそうはいかんぞ馬鹿ガメが!!」

「は…はあっ?!!頭大丈夫かこの変質者?!!!」

「はいはい、ゴルベーザ様の御前でケンカしないの!あんたらが犬猿の仲なのはいつものことだけどさ!」

ルビカンテとカイナッツォの喧騒をバルバリシアが諌めて止めた。

「ねえねえゴル様、クリスタルを取りに行くのならリフレクをあらかじめかけておいたほうがいいかもしれませんよ。きっとセシル達が阻止して来るだろうし、その仲間に魔道士がいたら厄介だから」

リズが小さく挙手してゴルベーザに言うと、ゴルベーザも「それもそうだな」とリフレクを自分にかけた。

リズの発言を聞いて、彼の頭の良さをスカルミリョーネは感じ取った。

「では、行ってくる」

一瞬でゴルベーザは魔法で姿を消して行った。

「ゴルベーザ様……無事にお帰りになられるといいのだが」

スカルミリョーネが呟いた。

「ゴル様ならお強いんだから大丈夫大丈夫!信じて待とうよ!ねっ?スーさん!」

にこにこ自分を励ますリズの頭を、スカルミリョーネは優しく撫でた。

「それにしても…弟と戦うってどういう気持ちだろう?セシル・ハーヴィはゴル様のこと覚えてないんだよね?」

「本当はお辛いでしょうね…でもいずれは、ちゃんと自分達の血の繋がりをセシルに説明するおつもりなんじゃないかしら?」

「やるせねぇなぁ…」

「そうだな…」

「今だけは貴様の意見に賛同する」

リズ、バルバリシア、カイナッツォ、スカルミリョーネ、ルビカンテが言った。

「とにかくゴル様、ご無事で帰って来られるといーね」
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