第5章 少年の想い
歌っているのは、ギルバートだった。
少女のように美しいその姿が、月明かりに照らされている。
「……ギル」
「!」
カインに声をかけられ、ギルバートは竪琴を爪弾くのを止めその方を振り向く。
「カイン…」
「綺麗な歌だな」
「ありがとう……」
ギルバートは微かに微笑んだ。
「この歌は、6年前に作った歌なんです。とても大切な人が亡くなった時……」
「大切な人?」
「はい。ダムシアンの従者の娘のアンナという子がおりました…。とても仲良しでした。初恋だった。しかし、高熱病で、7歳を迎える事なくこの世を去っていった」
ギルバートは、黒く長い睫毛の紅い瞳を伏せた。
「すごく悲しくて、毎日死ぬことばかり考えていた。どうせ長生きできない体なんだから、早くアンナのもとに行きたい、どうせ僕も病で死ぬんだからって…。しかし、リズ君という親友が出来てからは少しずつ前向きになれました」
「リズ君てのは…?」
「僕の侍医です。彼がいなければ、僕はここまで大きくなれませんでした」
ギルバートは彼に感謝している。
その事が、カインにも深く伝わった。
「旅を続けていれば、リズ君とも再会できるかな…。僕は、彼が死んだとは思えないんです。セシルやあなた達と旅をしているうちに会えるといいんですけれど…」
「…ああ。きっとそのうち会えるさ。お前は体が丈夫じゃないんだろ?早く休め」
「そうですね。おやすみなさい」
「おやすみ」
ギルバートが去った後、カインはフゥと溜め息をついた。
(……なんだか、ディストでの日々を思い出す歌だったな)
カインは、切なさにひとり耐えながら美しく輝く月を見上げた。
少女のように美しいその姿が、月明かりに照らされている。
「……ギル」
「!」
カインに声をかけられ、ギルバートは竪琴を爪弾くのを止めその方を振り向く。
「カイン…」
「綺麗な歌だな」
「ありがとう……」
ギルバートは微かに微笑んだ。
「この歌は、6年前に作った歌なんです。とても大切な人が亡くなった時……」
「大切な人?」
「はい。ダムシアンの従者の娘のアンナという子がおりました…。とても仲良しでした。初恋だった。しかし、高熱病で、7歳を迎える事なくこの世を去っていった」
ギルバートは、黒く長い睫毛の紅い瞳を伏せた。
「すごく悲しくて、毎日死ぬことばかり考えていた。どうせ長生きできない体なんだから、早くアンナのもとに行きたい、どうせ僕も病で死ぬんだからって…。しかし、リズ君という親友が出来てからは少しずつ前向きになれました」
「リズ君てのは…?」
「僕の侍医です。彼がいなければ、僕はここまで大きくなれませんでした」
ギルバートは彼に感謝している。
その事が、カインにも深く伝わった。
「旅を続けていれば、リズ君とも再会できるかな…。僕は、彼が死んだとは思えないんです。セシルやあなた達と旅をしているうちに会えるといいんですけれど…」
「…ああ。きっとそのうち会えるさ。お前は体が丈夫じゃないんだろ?早く休め」
「そうですね。おやすみなさい」
「おやすみ」
ギルバートが去った後、カインはフゥと溜め息をついた。
(……なんだか、ディストでの日々を思い出す歌だったな)
カインは、切なさにひとり耐えながら美しく輝く月を見上げた。