第5章 少年の想い

「ようやくお目覚めね。もう起きないかと思ったわ」

リズの寝かされていた寝台の横で、長い金髪の美しい女性が言った。

「ここはゾットの塔だ。まだ体が本調子ではないだろう。ゆっくり休め」

フードで顔が隠れた男性がリズに優しく言った。

「ゴルベーザ様が、カイポ周辺で倒れていた貴様をここに連れて治癒魔法をかけたのだ。今は出かけられているがな」

赤いマントに身を包んだ、ポニーテールの赤髪の男性がクールに言った。

「んで、俺達はお前のこと見てろってゴルベーザ様から頼まれたわけ」

青い髪と衣装の男性が言った。

「あの…あなた達は…?」

リズはおずおずと尋ねた。

この四人は何者なのだろうか。

「私達は、ゴルベーザ様にお仕えする『四天王』。私は火のルビカンテだ」

「私は土のスカルミリョーネ…」

「風のバルバリシアよ」

「水のカイナッツォだ!よろしくな~ピンク。俺、ほんとは亀の魔物なんだよ。マントの下に何も着てない赤い変態人工モンスターもいるけどな」

「誰が変態だ馬鹿ガメ」

ルビカンテはカイナッツォをぎろりと睨んだ。

「ふーん。カメに変質者か……」

「「?!!」」

カイナッツォもルビカンテも面食らった。

初対面で、まさかのカメ呼ばわりに変質者呼ばわり。

「あとは……スーさんに風の姐様ってとこ?」

「スーさん……」

「あははははは!あんた面白い子ね!あんたなんていう子なの?」

バルバリシアはツボにはまったのか大笑いしている。

「エドウィン・シェーン・リズです。リズです。12歳です。ダムシアンでギルバート7世殿下の侍医をしておりました」

リズはぺこりと頭を下げながら自己紹介した。

「ほう。お前はリズというのか…」

そこにゴルベーザが入室してきた。

「「おかえりなさいませゴルベーザ様!!」」

「ああ、ただいま」

ルビカンテとカイナッツォに、ゴルベーザは挨拶を返す。

「どういうつもりですか…?!ダムシアンを襲撃したくせに、そのダムシアン人の僕の命を助けるなんて!」

リズはゴルベーザに向かい声を荒げた。

するとゴルベーザは、リズに頭を下げた。

大の男が、ちっぽけな12歳の少年に。

「すまない。クリスタルを集める為に仕方なかったのだ。私は、私の目的の為にクリスタルを集めている。お前をここで介抱したのは、その贖罪の為なのかもしれない…」

「クリスタルを集める…?目的って?」

「我が弟を、過酷な運命から救いだす為だ。その為にはクリスタルがいる。…許してくれとは言わない」

「……………。わかった。ゴル様、命を助けてくれてありがとう。僕をこのゾットの塔に置いて下さい」

リズはゴルベーザに微笑んだ。

「どうせ行く所もないし、四天王といっしょにゴル様のお仕事を手伝うよ。ゴル様の弟がどんな人なのかも気になるしね」

「ありがとう。リズ…」

ゴルベーザも、リズに柔らかく微笑んだ。

「とりあえず、顔は同じだ。弟と言っても双子だからな。名はセシルという」

「へぇー。セシルか…」

彼と同じ顔なら、きっと綺麗な人なんだろうな。

そう思うリズだった。




カイポの町、月が照らす真夜中。

カインはふと目が覚めて、ベッドを抜け出し夜の散歩に出た。

するとどこからか、歌声と竪琴の音色が耳に入る。

とても澄んだ声のもとを、思わずカインはたどる。
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