第5章 少年の想い

そこに、セシル達が焦った様子でやってきた。

燃える荒廃した城。

そこかしこに転がる遺体。

「遅かったか……。
ーーーーー!」

セシルは倒れているギルバートに気付くと、駆け寄った。

「君、大丈夫かい?ーーーケアルラ!」

セシルは苦しんでいるギルバートに治癒魔法をかける。

「わたしも…ケアルガ!」

「ケアルダ!」

ポロムとローザも治癒魔法をかける。

ようやくギルバートは動けるようになり、ゆっくりと立ち上がった。

「ありがとうございます……」

「あんたは?」

カインが短く尋ねた。

「僕は、ギルバート7世。ギルバート・クリス・フォン・ミューア。このダムシアンの王子です…。この城は、銀髪の男に襲われ……父も母もやられ、侍医もどこかへ飛ばされ……クリスタルも奪われてしまいました…」

言いながらギルバートはうつむいた。

「銀髪の男…ゴルベーザだわ」

ローザが呟いた。

「さあ、ここは危険だ。僕らといっしょに…!」

セシルが言うと、ギルバートはこくりとうなずいた。

そして、国王の遺体のそばにある竪琴を拾った。

「あなた達は、見たところ旅人のようですね。では、僕もこれからは旅の吟遊詩人として振る舞うことにします……急いでここを出ましょう」

ギルバートの態度は、あまりにも冷静で大人びていて、セシル達は思わず彼を見詰めてしまう。

静かすぎて、どう見ても12歳程度の子供の態度とは思えない。

「ギルあんちゃん、大人よりつえぇな……」

パロムはギルバートの深紅の強き眼から目を離すことができなかった。

「いいえ、本当は僕は弱虫です。もう何もかもどうでもいいし、これからどうすればいいかすらわからない。だから、あなた達についていくだけ」

「私達は、ゴルベーザを追って旅をしていますの。ギルバート様も来て下さいますか?」

ポロムが言った。

「ここにいても何も始まらないぜ。絶望しているのはわかるが、悲しむより行動を起こせ」

カインが厳しくも正しい意見を言った。

「……そうですね。ゴルベーザを共に追います。そうすれば、生き別れた侍医も見つかるかもしれない」

ギルバートは深紅の眼を伏せた。

その心は、ただただ静かだ。

「そうか。これからよろしくね。僕はパラディンのセシル」

「竜騎士…、カインだ」

「白魔道士のポロムですの」

「黒魔道士のパロムだ!」

「白魔道士のローザよ」

それぞれが名乗った。

「皆さん、よろしくお願いします。僕は体が弱いので、皆さんにご迷惑をかけてしまうかもしれませんが……。なるべく、足を引っ張らないように努めます。さあ、早くここを出ましょう」

セシル達と共に、ギルバートは燃え盛るダムシアン城をあとにした。

その後ろ姿を、一人の少女の霊が見ていたーーー…




その頃、ゾットの塔では。

寝台に寝かされたリズが、ハッと目を覚ました。

ゴルベーザの魔法に巻き込まれ、飛ばされた時に気を失っていたようだ。

リズはガバッと起き上がった。
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