第4章 切なる祈り

「とにかく、こんな所早く出ましょう。ーーーテレポ!」

ローザが唱えると、そこには5人の姿は無くなった。

外へと一瞬で脱出する魔法を使ったのだ。

その様子を、ゴルベーザは別室で水晶玉に光景を映し見ていた。


(カインの洗脳を解かれたか。まあ良いだろう、また次の機会を見てこちらへ来させれば良い)

(それより、クリスタルを早く集めねば)

(次の狙い目はーーーー……)



数日後、セシル達はミシディアを訪れた。

パロムとポロムを長老のもとに返す為だ。

「セシル殿、パロムとポロムはお役に立ちましたかな?」

「ええ、とても。二人がいなきゃゾットの塔までたどり着けませんでしたし友も助け出せませんでした」

長老の言葉に、セシルは微笑んで答えた。

カインは洗脳されていた事をまだ気に病んでいるのか、ばつが悪そうに目を伏せた。

「さようですか。それは何よりです。さあ、パロム、ポロム、こちらへ」

長老が呼ぶも、パロムとポロムはセシル達の側から離れない。

「パロム!ポロム!お主らの役目は終わったのだぞ!」

「終わってなんかないよ!長老はあんちゃんの力になれって言ったじゃないか!」

「お許しを!」

「お前達……。………わかった、セシル殿、この二人をよろしくお願いします」

「ええ、是非とも。これからもよろしくね、パロム、ポロム」

「いやったー!!そうこなくっちゃ!!」

パロムがはしゃいで大喜びした。

「私、がんばりますわ!」

ポロムも嬉しそうだ。

「それはいいとして、次はどこに向かう?これは洗脳されていた時ゴルベーザが言っていた事なんだが、ダムシアンの火のクリスタルを狙うということらしい。ゴルベーザを追うなら、そこに向かってみるのもアリかもしれないが…」

カインがクールに言った。

「なんだって?!じゃあ早くダムシアンに向かわないと!」

「そうね、ゴルベーザにクリスタルを奪われる前に行かなくちゃね」

セシル、ローザが言った。

「そうと決まれば行くぞ、時間がない。長老、邪魔したな」

カインはそっけなく長老にかすかにお辞儀した。


その頃、砂漠の王国ダムシアンにて。

城内の一室で、床にふした艶やかで長い黒髪の少年の前に、ブロンドの巻き毛の眼鏡をかけた青年がひざまずいている。

「どうしても行ってしまわれるのですね。お体に気をつけて、しっかりね。ご家族によろしく」

ベッドの中で黒髪の少年がおっとりと言った。

「はっ。家族が全員流行り病で危篤などという事にならなければ、王子のお側を離れずにはすんだのですが……」

ブロンドの巻き毛の青年は、王子らしき黒髪の少年に深々と頭を下げた。

「大丈夫だよ、フォルテさん。クリス様のことは僕にお任せを!これでも侍医なんですから」

桜色の髪と目をした眼鏡の白衣の少年が、頼もしく胸を張った。

そんな少年に、フォルテと呼ばれた巻き毛の青年は静かに微笑んだ。

「ありがとうございます、リズ君。それでは王子、失礼致します…状況が落ち着いたらまた教育係の務めを果たすべくダムシアンに帰って参りますゆえ…それまではファブールの村に下がらせて頂きます」

「はい。フォルテ」

「またね、フォルテさん」

こうして、フォルテはダムシアン城をあとにした。

この後に何が起こるか知っていたら、彼はダムシアンを去る事をやめただろうか?

真相は闇の中……。
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