第4章 切なる祈り

「どうした?!剣を抜け!人間!!俺のディストを滅ぼした時のように!!」

カインは眼を殺気でぎらぎらさせながら叫んだ。

「ディスト…?!」

「ディストって…まさか…?!」

ポロムとパロムは思い出した。

以前、本で読んだ事を。

ディストとは、幻獣や魔族を従える竜族だけの国。

しかしバロンにより滅ぼされた。

ディストの竜族、『ディスト族』の命は幻獣や魔族の命でもある。

現在も幻獣や魔物が生きているのは、ディスト族の王子、次期竜王が今もどこかで生き延びているからだという。

まさかその次期竜王が、今目の前にいるカインだというのだろうか。

「カイン!!やめて!!」

ローザがセシルをかばうように立った。

「カイン!思い出して!私達の友情を……」

ローザは手を組み、祈りを始めた。

するとカインの心に、頭の中に、ローザやセシルと笑いあった記憶が流れこんでくる。

カインは頭を両手で抱え、その場に膝をついた。

「ググ…苦しい!やめろぉぉぉぉっ!!」

叫ぶと、カインは倒れてしまった。

「カイン!!」

「カイン!」

セシルとローザはカインに駆け寄る。

パロムとポロムも、おそるおそるカインに近付いた。

カインはハッと目を覚ますと、セシルとローザにバッと頭を下げた。

「すまない!!俺はなんという事をっ……!!」

「気にしないで。正気じゃなかったんだろう?」

セシルは優しい眼差しでカインに微笑んだ。

「ああ……言い訳になるかもしれないが、ゴルベーザに洗脳されていたのだと思う……」

カインはうつむいて答えた。

「いっしょに戦いましょう、カイン…」

ローザはカインに全てを許すかのように優しく言った。

「へっ!ゴルベーザに洗脳されるなんて、とんだマヌケだね~」

「パロム!!」

憎まれ口をたたくパロムにポロムが怒った。

「このガキどもは?」

「ああ、カインは初めてだったよね。ミシディアの双子の魔道士、パロムとポロムだよ」

セシルが紹介した。

「ふーん。まだ小さいのに魔法が使えるとはな…」

「へへん!オイラはミシディアの天才児と呼ばれた男だぜ?」

パロムがふんぞり返った。

「パロム!!おごり高ぶってはいけないと、いつも長老様から言われてるでしょ!!」

そんなパロムをポロムが叱った。

(なるほど、生意気なガキと分を弁えたガキか…)

カインは心で呟いた。
2/3ページ
スキ