第1章 精霊の見える少年
魔法王国コヴォマカの外れの小さな村。
そこには、魔法も精霊も伝わっておらず、なんのチカラも持たぬ人々が暮らしていた。
その中で、一人異色の存在の少年がいた。
「フロー、今日はなにして遊ぶ?」
『じゃあ何か、新しい水の魔法でも教えてあげようか?』
「わあ、教えて教えて!」
うずくまって水溜まりと楽しそうに話す少年の姿を、人々は不気味に思った。
「フィーノのやつ、水溜まりに向かって一人で話してる……」
「このあいだは木の枝に向かって話しかけてたぜ」
「頭がどうにかなっちゃったんじゃないの」
「気持ち悪い……」
ヒソヒソと話す村人達に、少年――フィーノは訴えた。
「何もない水溜まりじゃないよ!ここに水の精霊がいるんだ!木の枝だって、木の精霊がひそんでるんだよ!一人で話してるんじゃないよ!」
「精霊なんているもんか!!ウソつき!!」
村人の少年が叫んだ。
「ウソじゃないよ!!水の精霊だけじゃなく水の魔法だってあるし使えるんだ!ほら!」
フィーノが掌の上に水の玉を作ると、周囲から悲鳴が上がった。
「うわああああっ!!化け物!!」
村人達は、散り散りに逃げてその場から去ってしまった。
その場がシーンと静寂に包まれる。
「…………。帰ろう……」
フィーノはとぼとぼと自宅に帰っていった。
「ただいまー……」
家のドアを開けるなり、フィーノは父親にグイと腕を掴まれ外へ引っ張り込まれた。
「?!」
そのまま、真っ暗な物置小屋の中へと入れられ鍵もかけられて、フィーノは半分パニックになった。
「パパ?!なんでこんな事するの?!出して!!ねえ!!」
何度もドアを開けようと手探りでドアを探すが、手は何も見えず暗闇をさまようばかり。
「外から、全部聞こえたわよ……あなたみたいなおかしな子、もう外に出せないわ」
暗闇の外から母親の声が。
「こんな化け物、拾って育てるんじゃなかった……。食事は持ってくるから、お前はもうそこから出るな」
次いで父親の声が。
フィーノは頭が真っ白になった。
育ての親でさえも、自分を信じてくれず化け物扱いし、暗く狭い場所に閉じ込めた現実。
何も見えない真っ暗闇が心の傷と恐怖を助長する。
ついにフィーノは叫んだ。
「いやああああああ!!!!出して!!出して――――――ッ!!!!!!」
すると、暗闇に冷気が満ち、フィーノを中心に冷たい嵐が巻き起こった。
視界がようやく明るくなったかと思うと、次にフィーノの目に飛び込んで来たのは雪と氷に覆われた冷気に溢れた寒い村だった。
人も家も地面も草木も何もかも、氷と雪に覆われている。
フィーノは、寒さと恐怖で震えが止まらなかった。
そこに、一人の老紳士が現れた。その肩には、たくさんの精霊が集っていて、フィーノは思わず彼を見詰めてしまった。
「あなたは……誰?」
「私は、魔法学校ウィルオウィスプの校長、グラン・ドラジェ。キミは精霊が好きかい?」
「……うん、大好き」
「もっと精霊と仲良くしたいかい?」
フィーノは、彼の言葉に黙って頷いた。こうしてフィーノは、魔法学校で学ぶ事になった。
魔法学校の寮へ向かう道すがら、グラン・ドラジェはフィーノに語った。
「私の学校を出たものの多くは 国の要職についている。だけど、私が魔法を教えているのはそんなことのためではない。 私がキミに伝えたいのは全て。 この世界にあるもの全て。 最後にはそれが、キミの意思だけで自由に動くようになる――」
そこには、魔法も精霊も伝わっておらず、なんのチカラも持たぬ人々が暮らしていた。
その中で、一人異色の存在の少年がいた。
「フロー、今日はなにして遊ぶ?」
『じゃあ何か、新しい水の魔法でも教えてあげようか?』
「わあ、教えて教えて!」
うずくまって水溜まりと楽しそうに話す少年の姿を、人々は不気味に思った。
「フィーノのやつ、水溜まりに向かって一人で話してる……」
「このあいだは木の枝に向かって話しかけてたぜ」
「頭がどうにかなっちゃったんじゃないの」
「気持ち悪い……」
ヒソヒソと話す村人達に、少年――フィーノは訴えた。
「何もない水溜まりじゃないよ!ここに水の精霊がいるんだ!木の枝だって、木の精霊がひそんでるんだよ!一人で話してるんじゃないよ!」
「精霊なんているもんか!!ウソつき!!」
村人の少年が叫んだ。
「ウソじゃないよ!!水の精霊だけじゃなく水の魔法だってあるし使えるんだ!ほら!」
フィーノが掌の上に水の玉を作ると、周囲から悲鳴が上がった。
「うわああああっ!!化け物!!」
村人達は、散り散りに逃げてその場から去ってしまった。
その場がシーンと静寂に包まれる。
「…………。帰ろう……」
フィーノはとぼとぼと自宅に帰っていった。
「ただいまー……」
家のドアを開けるなり、フィーノは父親にグイと腕を掴まれ外へ引っ張り込まれた。
「?!」
そのまま、真っ暗な物置小屋の中へと入れられ鍵もかけられて、フィーノは半分パニックになった。
「パパ?!なんでこんな事するの?!出して!!ねえ!!」
何度もドアを開けようと手探りでドアを探すが、手は何も見えず暗闇をさまようばかり。
「外から、全部聞こえたわよ……あなたみたいなおかしな子、もう外に出せないわ」
暗闇の外から母親の声が。
「こんな化け物、拾って育てるんじゃなかった……。食事は持ってくるから、お前はもうそこから出るな」
次いで父親の声が。
フィーノは頭が真っ白になった。
育ての親でさえも、自分を信じてくれず化け物扱いし、暗く狭い場所に閉じ込めた現実。
何も見えない真っ暗闇が心の傷と恐怖を助長する。
ついにフィーノは叫んだ。
「いやああああああ!!!!出して!!出して――――――ッ!!!!!!」
すると、暗闇に冷気が満ち、フィーノを中心に冷たい嵐が巻き起こった。
視界がようやく明るくなったかと思うと、次にフィーノの目に飛び込んで来たのは雪と氷に覆われた冷気に溢れた寒い村だった。
人も家も地面も草木も何もかも、氷と雪に覆われている。
フィーノは、寒さと恐怖で震えが止まらなかった。
そこに、一人の老紳士が現れた。その肩には、たくさんの精霊が集っていて、フィーノは思わず彼を見詰めてしまった。
「あなたは……誰?」
「私は、魔法学校ウィルオウィスプの校長、グラン・ドラジェ。キミは精霊が好きかい?」
「……うん、大好き」
「もっと精霊と仲良くしたいかい?」
フィーノは、彼の言葉に黙って頷いた。こうしてフィーノは、魔法学校で学ぶ事になった。
魔法学校の寮へ向かう道すがら、グラン・ドラジェはフィーノに語った。
「私の学校を出たものの多くは 国の要職についている。だけど、私が魔法を教えているのはそんなことのためではない。 私がキミに伝えたいのは全て。 この世界にあるもの全て。 最後にはそれが、キミの意思だけで自由に動くようになる――」