第7章 真打と影打

一方、地獄の城では人の姿の竜太郎とチョルくんが話していた。
「なあ、知ってるか?剣一って、影打だったらしいぜ」
影打。
それは、刀を造る際に良い品を納める為に同じ刀を複数造った内、その際の未納となった刀の事である。
そのうちの出来の良いもの―――真打を納める為、影打は納められないという。
「アイゴー…。じゃあ、やっぱり剣一の名前はおじいちゃんが…。
通常は、影打には銘が刻まれないっちおじいちゃんの言うとったし」
「みてえだな。
なんでもよ、劣化品扱いされたくなくて、兄弟刀の真打みたく活躍したくて、それで剣一には魂が宿ったらしい。
まっ、アロケルじいさんの武器になった瞬間に吹っ切れたみてえだけどな」
そんな経過があり妖刀と化し、様々な人に恐れられてきた剣一。
彼のたどった経緯を、チョルくんは哀れに感じた。
「知らんかったし…。
で、その剣一は?」
「アロケルじいさんと、地上に行ったぜ。
使い魔も立派なハエ騎士団だから、あいつら二人行動でもいいんだよな~。
なんか特殊だよなー」
そう。剣一は使い魔。
ハエ騎士団には、必ずグループで戦えという法律が定められているが、使い魔もハエ騎士団とみなされているため、剣一を武器としているアロケルは剣一と一緒ならば二人グループなのだ。
何が起きるかわからないこの戦争中には、便利なシステムだ。
「使い魔もハエ騎士団…つまりはだな、チョルくん。
俺の言いたいことがわかるか?」
「なんね?」
チョルくんは聞き返した。
竜太郎は、ビシッ!と天を指し誇らしげに答えた。
「俺も使い魔!俺もハエ騎士団なのだ!!
はっはっは!!
剣一も俺も一緒ってわけさ!!」
「剣一はペットじゃなかよ?」
チョルくんは悪気なく、思った事を言ってのける。
「一緒なんだよ!一緒!!」
竜太郎は一瞬固まるが、赤面しながら反論した。
「ははは、悪かったし悪かったし。
よお考えたら、お前もアスデモスと行動しとるもんな」
「そうだよまったく」
竜太郎はぶすっと答えた。
「俺だって、いざとなりゃあ頼れる使い魔なんだからな!」
「はいはい」
笑顔で竜太郎に返事をしながら、チョルくんは考えた。
アロケルと剣一が地上に行ったということは、買い物か何かだろうか?
それとも、戦いに?
この戦争中なのだ、いつ何があってもおかしくない。
まあ帰ってくればわかる事かと、チョルくんは考えるのをやめた。
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