第6章 切られし戦いの火蓋

「しかし、たくさん来とうね」
チョルくんは、ルシファーの手の2通の封筒を見た。
「ああ。パイモンは腹心だし、ダンタリアン君は手紙を出すのが趣味だからね。
けっこういろんな悪魔に出してるみたいだよ。ダンタリアン君はね」
「ふ~ん…あいつらしかユルか封筒やね。アルパカ模様だし」
ダンタリアンから来た手紙は、可愛らしいアルパカの模様で彩られている。
「あはは…まあね。
この前は、愛くるしいウサギのレターセットで来たな。
ところで君達、知り合いなのかい?」
「たまにドロップくれるし。アミーゴはそれが気にくわんみたいやけどな。
そっかー、ドロップなめる以外には、文通が趣味か…」
チョルくんは、答えながらウンウン頷く。
さりげなくアミーをアミーゴ呼ばわりしながら。

その後ルシファーと別れ、部屋に向かい廊下を歩きながらチョルくんは窓の外をちらりと眺めた。
ここは1日中空が黒く、時計でも見ない限り昼夜の区別がまるでつかない。
自分は、この世界に死ぬまでいるのだろうか?
それとも、長くは生きられない運命が待ち受けているのか?
考えるほど、わからなくなる。
この10年間、ヘルデウスや四天王に家族のように育ててもらったし、アロケルもそっけないが孫のように可愛がってくれた。
それでも、運命は変わらぬだろう。
ただ身を任せ、時が来るのを待っていねば。
自分は、大事な人質とはいえ、いつどうなるかわからない身なのだから。
(…それでん、手紙もらったり良か事もあるしな)
そう、悪い事ばかりではないのだ。
自分はまだまだ、この世界で息をしていたい。
チョルくんは、己の内から湧き上がる生命力を感じ自らを奮い立たせた。
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