第5章 狂おしき運命の旋律

イリスェントとタオが、ベッドに向かっている頃。
フォルネウスとアミーとレヴィアタンは、アミーの家で小会議を開いていた。
平たく言えば、2代目マナ一族にいたずらをしかけようという魂胆である。
「…どーよ!この作戦!イケね?!」
レヴィアタンが目を輝かせた。
「うんうん、イケる!フォルが人間に化けて2代目方角師にベタつき、さらに人間に化けたお前が2代目格闘家の嫉妬を煽り、この俺が人間に化けてやつらに仲間内のウソっぱちの誹謗中傷を流言し、仲間割れさせる!
最高の作戦だぜ!レヴィアたん!!」
「レヴィアたん言うな。しまらねーよ」
レヴィアタンがアミーを睨み付けた。
「頑張ろうね~、アミーゴ~」
「うるせえ!!変なあだ名で呼んでんじゃねえ人様を!!」
「お前もな」
ニコニコ顔のフォルネウスに怒鳴ったアミーに、レヴィアタンが短く言った。
「…う~ん。みんな賑やかだなぁ。
何してるの~…?」
そこに、眠たそうに目をこすったパジャマ姿のダンタリアンが現れた。
アミーとダンタリアンは、同居者なのである。
「おう!ダンタリアン!実はかくかくしかじかなわけよ」
レヴィアタンが嬉々として説明した。
「ふ~ん、そうなんだ…」
「ダンも参加しない?面白そうだよ~」
フォルネウスがウキウキとダンタリアンを誘った。
しかしダンタリアンは、寝ぼけ眼で断った。
「ん~…僕はいいや…。
みんな頑張ってね…おやすみ…」
そして、あくびをしながら寝室へと戻って行った。
「ちぇっ。ダンは参加しないのか~」
フォルネウスが口を尖らせた。
「アイツはおとなしいいいこちゃんだからな。仕方ねえよ」
アミーが、やれやれという仕草をした。
「とにかく、明日にでも決行だ!抜かるなよ、野郎共!」
勇むアミーの後に、レヴィアタンとフォルネウスが声を揃えて「おーっ!」とやる気を高めた。

翌日。2代目マナ一族の5人は、地上に買い物をしに降りていた。
買い物を終えて、天上界に帰ろうと倭区域の外に出た時だった。
「うわ~、ここどこ~?!
わかんないよ~迷っちゃったよ~」
人間に化けたフォルネウスが、同じく人間に化けたレヴィアタンとアミーの傍らで突然叫んだ。
なんとわざとらしい演技。
大根すぎるだろ、とレヴィアタンとアミーですら引いた。
「ね~、かわいいおじょーちゃん道案内してよ~~」
そして、チェンの両手をギュッと両手で包むように握った。
チェンは、びっくりして硬直している。
タオがレヴィアタンにより猛烈な嫉妬を煽られたのは、これとほぼ同時である。
「てめええええ!!!!
オレの女にベタついてんじゃね――――――!!!!!」
「うわああ?!!!」
タオは容赦なしに、人間に化けたフォルネウスに襲いかかった。
「ぎゃははははは!!!!!!!!!」
この光景は、正反対ゆえにうまがあわず内心フォルネウスが嫌いなレヴィアタンにとっては、最高に面白い光景だ。
おかしすぎて、おなかが苦しくなっている。
「わー!ちょっとタオ、よしなよ?!」
「Violenceはダメだよ!」
「はーなーせーゴラアアアアッ!!!!」
あゆむとアダムが、必死にタオを押さえる。
どちらが敵か味方かわからない状況の中、アミーは口を開いた。
「おい。バンダナ野郎。俺、聞いたことあるぞ。
この中華帽をかぶったガキが、お前のことウスラハゲって言ってたの」
「!??
はぁ?!!!」
タオは目を見開いた。
いわれのない冤罪だ。
「はっ…ちょ…オレ、んなこと言ってねーし!」
根も葉もない濡れ衣を着せられたタオは、怒りと困惑が入り交じったような顔をしている。
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