第5章 狂おしき運命の旋律
「戦いというのはな、アダム」
イリスェントは、諭すように口を開く。
「皆、自分自身の事で手一杯なのである。
サタンは強い。
我が輩とて、1000年間相手して来たが自分の命を守ることで精一杯で、仲間の身まで守る余裕はなかった。
わかるであるな?
どんなに怖くても、戦うしかないのである。
それが生き延びるということなのだから。
我が輩も、精一杯サポートするのである」
覚醒したからには、諦めて自分の身を守るしかない。
怖くても、甘えてなどいられないのだ。
逃げずに戦え。
目の前の先祖はそう言っているように、アダムには感じられた。
「…我が輩とて、戦いよりは平和が好きである」
イリスェントはフッと哀しく微笑んだ。
「勇気を出そうではないか?アダム。
勇気を出して、生きる道を切り開こう。
我が輩も、皆もいるのである」
「……うん」
アダムの体の震えは、いつのまにか止まっている。
(…そうしたら、お姉ちゃんにもいつか会えるかな…。
道を切り開いていけば…)
姉の身に起こった事などつゆほども知らないアダムは、心の中で願った。
まだ姉はどこかで生きていると、そう信じて。
二度と会える事のない姉と………。
「イリスェント。今から、ボクに射撃教えてくれるかい?」
「もちろん」
イリスェントはにっこり承諾した。
「あ~、くそだりぃ……」
一方、廊下では、ホウキを手にうなだれたタオが。
「なんだよこの神殿!広すぎんだろ!
なんで掃除当番なんてあんだよ!?
魔術でちゃちゃっとキレイにできねーもんなのか?!」
「それでは人間ダメになるし修行にもなるとの、Sテレラの言葉だ。
まあ我々は、人間ではなく精霊なのだがな」
シャッシャッとホウキを動かしながら、涼しい顔でマオが言った。
「…オレは精霊じゃねーよ」
「どんな罪があろうと、精霊は精霊だ。
それに、生き抜く為であったのだろう?
だとしたら、今を正しく生きればそれでじゅうぶんだ」
タオには、捕まらなかったとはいえ窃盗罪がある。
チェンや自分の衣服や食べ物を手に入れる為、犯罪行為に手を染める事も、仲間と出会うまではしばしばだった。
追いかけてきた警察や店の人間を、マナのチカラを使い制する事すらもあった。
そんな過去のせいかタオはすさんだ目をした少年だったが、マオが"お守り"の帽子を与えもとの明るさを取り戻させて現在に至る。
「清くとまではいかずとも正しく。そう難しい事ではあるまい。
たとえ、IQの低いであろう汝でもな」
「うるせえよ!!」
タオは、イーッと反論した。
イリスェントは、諭すように口を開く。
「皆、自分自身の事で手一杯なのである。
サタンは強い。
我が輩とて、1000年間相手して来たが自分の命を守ることで精一杯で、仲間の身まで守る余裕はなかった。
わかるであるな?
どんなに怖くても、戦うしかないのである。
それが生き延びるということなのだから。
我が輩も、精一杯サポートするのである」
覚醒したからには、諦めて自分の身を守るしかない。
怖くても、甘えてなどいられないのだ。
逃げずに戦え。
目の前の先祖はそう言っているように、アダムには感じられた。
「…我が輩とて、戦いよりは平和が好きである」
イリスェントはフッと哀しく微笑んだ。
「勇気を出そうではないか?アダム。
勇気を出して、生きる道を切り開こう。
我が輩も、皆もいるのである」
「……うん」
アダムの体の震えは、いつのまにか止まっている。
(…そうしたら、お姉ちゃんにもいつか会えるかな…。
道を切り開いていけば…)
姉の身に起こった事などつゆほども知らないアダムは、心の中で願った。
まだ姉はどこかで生きていると、そう信じて。
二度と会える事のない姉と………。
「イリスェント。今から、ボクに射撃教えてくれるかい?」
「もちろん」
イリスェントはにっこり承諾した。
「あ~、くそだりぃ……」
一方、廊下では、ホウキを手にうなだれたタオが。
「なんだよこの神殿!広すぎんだろ!
なんで掃除当番なんてあんだよ!?
魔術でちゃちゃっとキレイにできねーもんなのか?!」
「それでは人間ダメになるし修行にもなるとの、Sテレラの言葉だ。
まあ我々は、人間ではなく精霊なのだがな」
シャッシャッとホウキを動かしながら、涼しい顔でマオが言った。
「…オレは精霊じゃねーよ」
「どんな罪があろうと、精霊は精霊だ。
それに、生き抜く為であったのだろう?
だとしたら、今を正しく生きればそれでじゅうぶんだ」
タオには、捕まらなかったとはいえ窃盗罪がある。
チェンや自分の衣服や食べ物を手に入れる為、犯罪行為に手を染める事も、仲間と出会うまではしばしばだった。
追いかけてきた警察や店の人間を、マナのチカラを使い制する事すらもあった。
そんな過去のせいかタオはすさんだ目をした少年だったが、マオが"お守り"の帽子を与えもとの明るさを取り戻させて現在に至る。
「清くとまではいかずとも正しく。そう難しい事ではあるまい。
たとえ、IQの低いであろう汝でもな」
「うるせえよ!!」
タオは、イーッと反論した。