序章~We lived,and what was prohibited!~

ベルフェーゴルが神殿へと立ち去ってから、エステレラは彼の依頼通り聖書を開いた。
創造者女神エイレンテューナ、天使である自分、この世界を支え均衡を保っている聖なる目に見えぬパワー、"マナ"。
それらを讃える内容で、いつもは終わるはず。
だが今回は、続きがあった。
「!?!!」
――――漆黒の者、サタンは害悪な存在。
――――女神に、天にあだなす"悪魔"。
――――その王、ヘルデウスは特に邪悪。
――――彼らは、人を惑わす。
――――関わっては、不幸になる。
――――滅ぶべき、恐ろしい異形の化け物。
「な、に!これっ……。…1度でも、こんなこと皆がしてた?!!」
サタンは確かに怠惰や傲慢など生まれ持つ性質こそあれ、人間を惑わしたり女神や自分にあだなした事などありはしない。
黒の翼こそあれど、異形だと感じた事がない。
関わって楽しくても、不幸になったことなんかない。
ヘルデウスはこの天上界の誰より心優しく温和だ。"特に邪悪"?
「なんだよ、この創作話…ッ?!」
人間の心は、聖書に影響する。
聖書を書くのは人間なのだ。
最後の一文は、こうだった。
――――"神よ、天使よ、救済を。"
「…救済って、なに…」
理解できない。人間達の考えている事が理解できない。
しかし、自分は天使だ。
人間を守るべき使命を携えている。
そうするしかないのか?
"救済"するしかないのか?
"救済"して、"友達を迫害する"しかないのか?
エステレラは、頭が真っ白になった。
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