第4章 Definition of happiness and friendship

「……忘れられるはずがあろうか。妖(あやかし)と呼ばれ、お家断絶。地位を剥奪されし事。
処刑されし時の親族の、我を見る恐れたような恨めしげな目」
マオが呟いた。
「…だが、ここでそちらへ行ってしまっては、真の妖(あやかし)となってしまう。
我は…ただの化け物には成り下がりたくない…」
「…そうよ。マオくんの言う通り。
ボク達は、誰かの為に生きる精霊……悪に生きる為に創られたわけじゃないもん」
シアンが言った。
「人間に、もう一度期待してみるのはダメでしょうか……?
もう一度…もう一度だけ……」
マナが、伏し目がちに小さな声で言った。
「人生をメチャクチャに、か…。
確かに、とんでもねえと思ったぜとんでもねえと。
主君、仕事、家、故郷。どんなに捨てたモノがあっただろう。
正直、女神やエステレラの話を呑むまでには時間がかかった」
ホトが口を開いた。
「だがよ、背負っちまったんだ。
投げ出したら、運命(さだめ)にそむき引き返し、侍として最も恥な事をしちまうだろ。
受け入れるしかないってこった。
ゆえに………」
ホトは、静かに付け加えた。
「どんなに辛く苦しくとも、俺は、俺達はお前らの仲間にはならない」
「…………そっか」
ダンタリアンは、ギュッと漆黒の槍を握りしめた。
酷く哀しそうな、悲哀の表情で。
「わかりあえると思ったのに…」
その顔のまま、ダンタリアンは槍を構え敵前へ飛び出した。

「――という事が、2000年前にあったらしい」
「アイゴ――――…」
アロケルの話を、チョルくんはしげしげと聞く。
「初代マナ一族を悪魔側に引き入れようとした、かぁ……えらく重大な話やね。
人質のチョルくんに話してよかと?
そげな重要機密」
「人質だからこそ、我々の事情には精通しておいたほうが良かろう」
地獄で暮らす人間だからこそ、その地獄の住人の知識くらいはあったほうがいい。
アロケルはそう考えたのだ。
「そっか。おじいちゃんは、チョルくんにいろいろな事を教えてくれるなし。
またひとつ、チョルくんの賢さに磨きがかかったし」
「何を言うか…全く、人間とは」
アロケルの頬が、若干ゆるむ。
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