第3章 有限だとしても

廊下を歩いていると、やがて窓を拭き掃除してるベルフェーゴルをチョルくんは発見した。
め~んどくさ、めぇんどくさ、と呟きながら、ゆっくり手を動かしている。
仕方がないので、チョルくんはバケツにかかっている複数の雑巾をひとつ取り、隣の窓を拭いてやる事にした。
「手伝ったって、なんも出ないっすよ」
ベルフェーゴルが、疑いの眼差しでチョルくんを見た。
「べーつに、何も下心なんかなかよ。
お前がめんどくさめんどくさうるさいけん、手伝っちゃるかと同情しただけだし」
窓を拭きながら、チョルくんは答えた。
「そっすか…。
………。
おめえ、おいら達が怖くないんすか?」
「ん?全然?」
チョルくんはきょとんとした。
「普通の人間なら、おいら達を嫌悪するっす。
地獄で悪魔と暮らすなんて、この世の終わりだと思うんすけど」
「まだ終わっとらんよ。
むしろ、これからだし。
新しい環境で、新しい人達と暮らす。
どこがこの世の終わりと?」
ベルフェーゴルは驚いた。
地獄にいながらにして、ここまで前向きに生きているとは。
この人間は…人間の中でも最強だ。
感心すらしてしまうほどに。
「これからよろしくだし!
悪かね、面倒かけるし!」
「面倒臭いのはいやっすけど、まあ仕方ないっす…」
ベルフェーゴルは、ぶっきらぼうに答えた。
「ここにはいろんなサタンがいるから、うまくやるんすよ」
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