第3章 有限だとしても
「ハアッ、ハアッ、ハアッ………」
地獄についた瞬間、ハエ騎士団員は全員その場にへたりこんだ。
「なんなのよ!なんで…なんで援軍が来るのよ~?!!」
パイモンが、信じられないという顔で言った。
「ウソだろ……確実に、初代学者を殺れると思ったのに…」
「なんでわらわら増えやがるんだ!!」
レヴィアタン、アミーが言った。
「攻撃しても攻撃しても、みんな最小限の動きでいなされちゃったわ。
さすがは元傭兵といったところかしら……悔しいわ」
パイモンの眉間にシワが寄った。
「うう…。瞬間移動で魔術を完全にくらうのはさけましたけど、やっぱりちょっと痛いですね…」
「俺が治したげる」
患部を押さえるアカーコックに、サブナクが歩み寄った。
「ありがとうございます、サブナク…」
「別にいいんだよっと。俺、治癒の魔術も得意だもん。
みんなのも治すね!」
温かく心地好い治癒の光に包まれる中、ダンタリアンだけが悲しそうな表情だ。
「…ダンタリアン、まだ気にしてんのか?」
アミーが声をかけた。
「もうよせよな。マナ一族なんかに情けかけるの。哀れむ価値もねえのにさ。
ダンタリアン、お前はいいやつすぎる。
司るものが司るものだし、だからつれぇんだ。
俺らは、闇にしか生きれねえってのに。
あの価値観のまるっきり違う偽善的なガキどもに、まともな話し合いが通じるか?」
「…そう言うアミーだって、本当は優しかった時代に帰ることを望んでる愛情深い人なんでしょ?
毒づいてばっかいるけど、本当はアミーが平和を願う優しい人だって、僕知ってる。人類が知らないだけで…。
ねえ、どうして優しい人が不幸になるのかな?
そんな人が幸せになろうとすると、阻む人が現れるのかな?
こんな世の中、おかしいよ」
ダンタリアンの目に、うっすらと涙が滲み出す。
「……いっしょに帰りたいよ、アミー。有限だとしてもいい。愛が、愛が欲しいよ………」
ポロポロと涙をこぼし始めたダンタリアンに、アミーは言葉を失った。
どうしてこんな優しい奴が、悪魔と呼ばれなくちゃならないのだろう。
そう思いながら…。
それからしばらくののち、地獄に人間の人質がやって来た。
『悪魔王』の目は、驚くほど優しく穏やかだ。
それが、チョルくんが人質として最初に気付いた事だった。
「おいら、いやっす。人間と一緒に住むなんて…」
そうベルフェーゴルがもらしたのは、チョルくんが来て数週間もたたない頃だった。
「まあねえ…。サタンなら誰しも、人間と同居なんてイヤだけど」
敦岡玲音との事もあって、人一倍彼は抵抗があるのだろう。
それを、アスデモスはあえて指摘せずにおいた。
「1日中泣きわめいてはりつめて暖炉の前にいて、私達にあからさまに敵意を向けまくってくるような子であれば、とっくに竜太郎のおやつにしてたわ。
現に今、あの子は生きている。
コレって、他の人間よりちょっとはマシって事なんじゃない?」
「…確かに、明るいっすけど…」
「私達をあからさまに嫌わない人間なんて、超超超超超超超超超超超貴重よぉ~?」
そんなことはわかっている。
悪魔が目の前に現れて、嫌悪しない人間など存在しない。
親切だったあの人間も、この姿を見た途端…。
心が暗くなるのが怖くなり、ベルフェーゴルは考えるのをやめた。
地獄についた瞬間、ハエ騎士団員は全員その場にへたりこんだ。
「なんなのよ!なんで…なんで援軍が来るのよ~?!!」
パイモンが、信じられないという顔で言った。
「ウソだろ……確実に、初代学者を殺れると思ったのに…」
「なんでわらわら増えやがるんだ!!」
レヴィアタン、アミーが言った。
「攻撃しても攻撃しても、みんな最小限の動きでいなされちゃったわ。
さすがは元傭兵といったところかしら……悔しいわ」
パイモンの眉間にシワが寄った。
「うう…。瞬間移動で魔術を完全にくらうのはさけましたけど、やっぱりちょっと痛いですね…」
「俺が治したげる」
患部を押さえるアカーコックに、サブナクが歩み寄った。
「ありがとうございます、サブナク…」
「別にいいんだよっと。俺、治癒の魔術も得意だもん。
みんなのも治すね!」
温かく心地好い治癒の光に包まれる中、ダンタリアンだけが悲しそうな表情だ。
「…ダンタリアン、まだ気にしてんのか?」
アミーが声をかけた。
「もうよせよな。マナ一族なんかに情けかけるの。哀れむ価値もねえのにさ。
ダンタリアン、お前はいいやつすぎる。
司るものが司るものだし、だからつれぇんだ。
俺らは、闇にしか生きれねえってのに。
あの価値観のまるっきり違う偽善的なガキどもに、まともな話し合いが通じるか?」
「…そう言うアミーだって、本当は優しかった時代に帰ることを望んでる愛情深い人なんでしょ?
毒づいてばっかいるけど、本当はアミーが平和を願う優しい人だって、僕知ってる。人類が知らないだけで…。
ねえ、どうして優しい人が不幸になるのかな?
そんな人が幸せになろうとすると、阻む人が現れるのかな?
こんな世の中、おかしいよ」
ダンタリアンの目に、うっすらと涙が滲み出す。
「……いっしょに帰りたいよ、アミー。有限だとしてもいい。愛が、愛が欲しいよ………」
ポロポロと涙をこぼし始めたダンタリアンに、アミーは言葉を失った。
どうしてこんな優しい奴が、悪魔と呼ばれなくちゃならないのだろう。
そう思いながら…。
それからしばらくののち、地獄に人間の人質がやって来た。
『悪魔王』の目は、驚くほど優しく穏やかだ。
それが、チョルくんが人質として最初に気付いた事だった。
「おいら、いやっす。人間と一緒に住むなんて…」
そうベルフェーゴルがもらしたのは、チョルくんが来て数週間もたたない頃だった。
「まあねえ…。サタンなら誰しも、人間と同居なんてイヤだけど」
敦岡玲音との事もあって、人一倍彼は抵抗があるのだろう。
それを、アスデモスはあえて指摘せずにおいた。
「1日中泣きわめいてはりつめて暖炉の前にいて、私達にあからさまに敵意を向けまくってくるような子であれば、とっくに竜太郎のおやつにしてたわ。
現に今、あの子は生きている。
コレって、他の人間よりちょっとはマシって事なんじゃない?」
「…確かに、明るいっすけど…」
「私達をあからさまに嫌わない人間なんて、超超超超超超超超超超超貴重よぉ~?」
そんなことはわかっている。
悪魔が目の前に現れて、嫌悪しない人間など存在しない。
親切だったあの人間も、この姿を見た途端…。
心が暗くなるのが怖くなり、ベルフェーゴルは考えるのをやめた。