第3章 有限だとしても

長い時間、戦い続けたせいだろうか。
イリスェントのアサルトライフルは、もう弾を出さない。
だが、銃弾を装填している時間がない。
「ケケケ、だいぶてこずらされたがもうおしまいだな」
レヴィアタンが嘲笑った。
「覚悟しろよ?」
サタンの1人――アミーが漆黒の槍を振りかぶり、イリスェント向かい襲い来る。
イリスェントは、反射的にぎゅっと目を閉じた。
その時だった。
「――ハァッ!!!」
「ぐっ?!」
マオが助けに入り、アミーの腕を蹴り上げ槍を遠くに飛ばしたのは。
「――マオ……?!」
「超よかった。なんとか間に合ったね!」
そのタイミングに合わせ、シアンが雑技団仕込みの華麗な動きで中国刀で、宙の漆黒の槍をバラバラにした。
「クッ……!野郎!!」
「おっと。それ以上は、させねぇぜ?」
仲間達に襲い掛かろうとしたサタンの集団に、ホトが音もなく刀を突き付ける。
「1人相手に大群でなきゃ、戦もできねえとはな。
…相変わらず無粋な奴らだ」
ホトの放つ気迫は、まさに武士そのもの。
「…そっちこそ、なんなの?」
ダンタリアンがポツリと呟いた。
「本当は、天上界は僕達が住んでいた場所なんだよ…?
君達が住んでいた場所は、地上じゃないか……。
お互い、日常が覆されるまでは…」
「何をごちゃごちゃと」
マオが静かに低く言うが、ダンタリアンは言い続けた。
哀れみの表情すら浮かべて。
「…ねえ。僕ら本当は、最初から誰も争いなど望んじゃいなかったんだ。
エゴイストの人類が、全てめちゃくちゃにしたんだから……人間のエゴのせいで、女神とエステレラが裏切ったんだから。
君達だって、人間に化け物扱いされてつらかったでしょ?
どうして、つらいって言わないの?苦しいって言わないの?
そんなにまで、戦おうとするの?」
善良を司る悪魔の言葉を聞いているうちに、マナ一族の5人は思えてきた。
悪魔より、むしろ自分達のほうが悪者なのではと。
「…し…しかし、君達だって悪いことをしているのである!
どんな理由があれど、悪いことをしている者に英雄はいない!」
イリスェントは、敵をキッと睨み付けた。
「最初に悪いことをしたのは、人間だよ…」
悲しみの表情のダンタリアンは、なおも言った。
「君達ってかわいそう。人間や女神やエステレラのエゴのために、戦わされて。
君達にも、天上界に来るまでそれぞれの人生があったはずなのに。
とってもかわいそう」
「まだ言うの!ボク達は、かわいそうなんかじゃない!
自分の想いで戦ってるの!!」
シアンは、清らかな悪魔に惑わされまいと必死に叫んだ。
一方、マナは毅然とした態度だ。
「そうです。…貴方達、許しません。
……罰を、受けて頂きます」
マナの手から放たれた魔力の雷に、サタン達は飲まれてしまう。
その瞬間、全員の意志が繋がった!
――――消されたフリをして、地獄へ瞬間移動だ!!
音もなく、それは実行された…。
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