第1章 覚醒の時、来たれり
「ヌナが…、ヌナがおらんかったら、チョルくんはずっと…。
ヌナが拾って下さったけん、チョルくんは家も持ち物も何もない生活から抜け出していろいろなことを学べたんよ?
チョルくんだけじゃなか。
ヌナが希望なのは、国民みんなだし…。
チョルくん納得いかんし…。
王様や王妃様にも、お知らせしてくるし」
パタンと静かに扉が閉まり、チョルくんは行ってしまった。
「お許し下さりませ。
あの子は、御忍びで町へ行った時、こちらへ連れてきた子ですの……。
住んでいた孤児院があまりにも酷い所で、抜け出して路上でひとりで暮らしていたそうなのです。
わたくしは、彼にさまざまな教育を施しました。
わたくしも、彼と離れたくないのはやまやまなのですが…」
イルカが話しているうちに、ドドドドと大きな多数の足音が押し寄せて扉が乱暴に開かれた。
王、王妃、それに無数の家臣や女官達、そしてチョルくんだ。
なんという情報伝達の早さ。
さすがのハカセも、これにはびっくりして硬直してしまった。
「シェムルカや、考え直しなさい!」
王が言った。
「あなたは王族なのですよ?!こちらへいなさい!!」
王妃も言った。
「みんな嫌がってます!ヌナ!」
チョルくんが叫んだ。
それから立て続けに、家来達もイルカに大きな声で申し出続けた。
お考え直し下さい、どうぞ宮中におとどまり下さい、義務でございます、お国を捨てられるのですか、
そんな無数の声を、イルカはたったの一言で静めさせた。
「もはや人間ですらなくなってしまった者が、国主であってよろしいとおっしゃいますの?」
王女の威厳に、その場がシーンと静まりかえった。
「……何とぞ、お許しくださいませ」
イルカは、座ったまま、静かに深々とお辞儀した。
これ以上、誰も言葉を発する者はいなかった。
こうして3代目巫女は旅立った。
ヌナが拾って下さったけん、チョルくんは家も持ち物も何もない生活から抜け出していろいろなことを学べたんよ?
チョルくんだけじゃなか。
ヌナが希望なのは、国民みんなだし…。
チョルくん納得いかんし…。
王様や王妃様にも、お知らせしてくるし」
パタンと静かに扉が閉まり、チョルくんは行ってしまった。
「お許し下さりませ。
あの子は、御忍びで町へ行った時、こちらへ連れてきた子ですの……。
住んでいた孤児院があまりにも酷い所で、抜け出して路上でひとりで暮らしていたそうなのです。
わたくしは、彼にさまざまな教育を施しました。
わたくしも、彼と離れたくないのはやまやまなのですが…」
イルカが話しているうちに、ドドドドと大きな多数の足音が押し寄せて扉が乱暴に開かれた。
王、王妃、それに無数の家臣や女官達、そしてチョルくんだ。
なんという情報伝達の早さ。
さすがのハカセも、これにはびっくりして硬直してしまった。
「シェムルカや、考え直しなさい!」
王が言った。
「あなたは王族なのですよ?!こちらへいなさい!!」
王妃も言った。
「みんな嫌がってます!ヌナ!」
チョルくんが叫んだ。
それから立て続けに、家来達もイルカに大きな声で申し出続けた。
お考え直し下さい、どうぞ宮中におとどまり下さい、義務でございます、お国を捨てられるのですか、
そんな無数の声を、イルカはたったの一言で静めさせた。
「もはや人間ですらなくなってしまった者が、国主であってよろしいとおっしゃいますの?」
王女の威厳に、その場がシーンと静まりかえった。
「……何とぞ、お許しくださいませ」
イルカは、座ったまま、静かに深々とお辞儀した。
これ以上、誰も言葉を発する者はいなかった。
こうして3代目巫女は旅立った。