第1章 覚醒の時、来たれり

一方、美花区域の外れ。
「…ククク…、上手くいったなっと」
黒いフードの男は、低く笑いながらフードを取った。
その姿は、悪魔――ハエ騎士団員サブナクだ。
鋭敏、衝動、狭量、制約を司る。
「どうせマナ一族になるんなら…、あのくらいのショーは見せてもらわないとなあ?
安売りのセール品買いに来たついでに、あんないいの見れちゃったよ~。
人間が死んだ♪いっぱい死んだ♪」
肩を揺らして、笑いを止められずにいる。
「俺は、まじないが得意なんだ。他人の魔力を暴発させるくらい、わけないないっとv」
彼は、陰険な事を考えさせたら地獄1なのだ。
「さあて、ヘルデウス様にご報告ご報告っと♪」
シュン、という音を残し、その場から彼の姿は瞬時に消えた。

「ヘ~ルデ~ウス~様っ♪
ご報告がございます!!」
シュン、と眼前にサブナクが現れ、ヘルデウスは突然の事で何も言えなかった。
そこには、アスデモスと人型に化けた竜太郎もいた。
変身した竜太郎は、裾の取り払われた丈の短い着物にズボン、銀色の短髪と、動きやすそうな格好をしている。
「どうしたの?サブナク」
「何事だよ」
アスデモス、竜太郎が尋ねた。
サブナクは、キヒヒと楽しそうに笑った。
「俺ね~。セールめぐりついでにいたずらしてきたんですよ!
覚醒寸前のマナ一族いたんで、エステレラのヤツにスカウトされる前にまじないをかけて力を暴発させてきちゃいました!!
人間いっぱい死にましたよっと♪
いや~っ、買い物ついでにいいもの見れたっと!!いいことしたっと!!」
「そうか。覚醒は早くても遅くてもいずれ我々の邪魔者となるのは間違いないが、人間の人口を減少させたのはよくやったな。
お前には、ほうびをせねばならんな。何がいい?」
買い物袋片手にハイテンションな彼に、ヘルデウスは若干苦笑いで問う。
遠慮したサブナクは、首をぶんぶんと横に振った。
「え~いいですよそんなの!
それより節約節約!」
「セール品ばっか買ってくるくらいのドケチだもんな、テメェ」
竜太郎の言葉に、アスデモスはウンウンうなずく。
「だってなるべく安いほうがいいじゃん!!」
「それはそうね~」
「アニーお姉様!!感化されないで下さい!!」
わいわいコミュニケーションを取る部下たちを眺めながら、ヘルデウスは考えた。
(3代目格闘家が覚醒したか…。
では、そろそろ他の能力者も……そのときはそのときだな)
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