序章~We lived,and what was prohibited!~

地上には、無数の人類や動物の生命が溢れ、天上にはサタンと呼ばれる漆黒の人々。
そして、それら全ての創造者たる女神エイレンテューナと彼女を支える右腕天使、エステレラ。
これで世界は成り立っている。
――そう、成り立つはずだった。

「この世界が出来て、およそ1000年か…」
遥か天上界に浮かぶ女神の住む所、人が"聖域"と呼称する場所で、サタン5億人の王、ヘルデウスは呟いた。
「地上が創られ、私が創られ、エステレラが創られ…。
四天王が創られ、他のサタン達も…。
地上の生命も…。
君ほど忙しい者を、私は見た事がない」
ヘルデウスは隣を向いた。
慈愛と苦笑の混じった、優しく穏やかな顔で。
「エイレンテューナ…」
そんな彼に対し、マナの女神も柔らかな微笑で返した。
『そうね…忙しかったわ。
けれど、素敵な忙しさです。
愛する人に囲まれ、生活していれるのですから…。
ヘルデウス、もちろん貴方も含めてですよ?』
「それは光栄だな。
私も…幸せだ。
君や5億のサタン、エステレラ…。この場所には、愛しておる者しかいない」
胸が温かく、自然と優しい声が出る。
ヘルデウスは、"幸福"の意味を噛みしめていた。
そして、その感情は、マナの女神も同じ。
「や――ん誰ッ??!誰ぇ――ッ?!
あたいのおやつ食べたの?!
大事に買いだめしてたのに――――!!
ばかーおおばか――――――――」
…暴食を司る彼女の声だ。
おそらく神殿からであろう。
なんという声量。
マナの女神もヘルデウスも、クスクスと笑った。
『私達、こんなに平和でいいのかしら?』
「あちらは、そうではないようだがな…」
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