第9章 迷いの心、誓いの絆

「……わかったし。皿洗いすりゃよかろ」
「うん。そうして欲しかったんす。ほら、集団生活だから皆協力しないと。
もうめんどい事になるのイヤっすから、次から気をつけて」
(…ベルフェーゴル……恐ろしい男よ)
(普段控えめな人ほど、怒ると怖いんだね…)
(ていうかベルフェーゴル君は、先ほど何と言ったのだろう?
マナ一族の方角師君やテチョル君もそうだが、方言とは難しいな)
ある意味大変な光景を眺めながら、悪魔達は思い思いに悟った。
普段(怠惰なだけに)不干渉気味で無口な奴ほど、怒らせてはいけないと。
チョルくんがキッチンに去った後、本を読みながらリラックスし始めたベルフェーゴルにルシファーはそっと言った。
「……ベルフェーゴル君。
君の“おめえ”は、東北風味の発音だろう?」
「はぁ…よくわかったっすね。
今めんどい気分だから後にして」
「…いつもめんどい気分ではないか…」
「あ?なしたど?
(あ?なんだって?)」
「いや、なんでもないんだ。読書を続けてくれたまえ」
「…でってまんず………(まったくもう)」
そう呟くなり、ベルフェーゴルは再び本に目を通し始めた。
(…我が城が静かになる日は、いつなのだ?)
心密かに己の未来を愁えるヘルデウスだった。
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