第9章 迷いの心、誓いの絆

「暴漢を消したのは、きっと帝をお守りする為だったのよ!!
それがどんな方法だったかなんて、関係ないわ!!
彼は誰より、仕事に超一生懸命だったじゃない!!
ボク達の生活が少しでも良くなるように、税を軽くし賦役を減らして下さったじゃない!!
物価だって下がって皆超喜んでたでしょ?!
身分の低いボクに、外国語や読み書きまで教えてくれた偏見のない良い人なんだから!!」
「シア‥‥」
「それがどうして、地位を奪われなきゃいけないの?!
どうして家族を皆殺しにされなくちゃならないの?!
おかしいよ!ボクはこんなの認めない!!
あんな優しい人を、妖(あやかし)呼ばわりなんかさせてたまるもんか!!」
泣き叫びながらシアンは、そのまま涙も拭わず飛び出した。
悲しみに打ちひしがれるあまり、足もとを見落とし階段で踏み外してしまう。
「あ……っ」
(やだっ、落ちる‥‥!!)
しかし、シアンの体は階段を転げ落ちる事なくふわふわと宙に浮いていた。
その現象が信じられず、シアンは空中で足をバタバタとさせる。
「えっ、えっ?なんでなんで??なんで?!
イヤーッなにこれーっ?!!」
降りたいと強く願うと、シアンの体は地面に着地した。
「‥だ、誰にも見られてないよね……?」
青ざめキョロキョロと辺りを見渡すと、遠くにマオが立ち尽くしているのを見つける。
「――――マオくん!!!」
その姿を見るなり、シアンは彼に駆け寄った。
「マオくん!聞いたよ!
ボク…ボク……っ」
「…汝もか……シアン……」
マオの顔は、青白くやつれまるで生気を宿していなかった。
「妖(あやかし)は…我だけで良いというのに……。
何故なのだ…我々は、何か悪い事をしたか……?」
マオの鋭い左目から、一筋の雫がこぼれ落ちた。
「我のチカラは……我々のチカラは、なんなのだ……?
我々は…どうしたら良いのだ………?
我は…何の為に生まれて来たのだ‥‥?」
「マオくん‥‥っ」
涙が溢れ、シアンは彼の胸に抱きつき、ギュッと背中に腕を回した。
「お前は、この世界を見守る為に生まれて来たんだ」
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