第9章 迷いの心、誓いの絆
(…何なのだ、この今一つ満たされぬ気持ちは)
馬に跨がり都を闊歩する、ひとりの長髪の少年がいた。
美しい顔立ちをひときわ目立たせる華美な衣装を身に纏い、一見非常に恵まれているかのように見える。
しかし彼は、憂鬱顔だった。
(我は…父上のおっしゃる通り、ひたすらにこの道を歩んで来た……。
幼き頃より夜も寝ず学問に励み、科挙に合格し、官吏として宮殿へ勤め‥‥。
宰相とて、楽になれたものではない。
それなのに……それなのに………)
――『茅様ほどの天才であれば、科挙に受かる事くらいわけもなかろう』
――『茅様のお父様はご立派な官吏ですもの。
跡目を継いで出世されるのくらい、当たり前ですわよね?』
(―――ふざけるな!!成功するのが当然だと思うな!!
あの親の子孫の癖にと言われぬ為にも、親族の顔に泥を塗らぬ為にもやってきただけだ!
当然だと思うな…当然だと思うな!!
昔からそうだ、誰一人として我が努力を見てくれた者などいなかった……。
…貴族であれば、これが必然なのだろうか…。
独り、耐え忍び、家柄やしきたりにがんじがらめにされる事が‥‥)
何やら賑やかな音が聞こえ、ふと横を見ると、そこは雑技団の公演場だった。
(…気分転換に、見ていくか。
たまには、供を連れずにこういう楽しい物を鑑賞したい)
静かに馬を止め、少年は公演場の中に足を踏み入れた。
中は観客で込み合っており、空いた席を見つけるのに若干時間を費やした。
だいぶ人気の雑技団なのだろう。
やがて雑技が始まり、観客達と共にそれに見いった。
女性達の演じる、きらきらとした美しい雑技の世界。
その中でも、ひときわ輝く少女の姿に少年は目を奪われた。
(なんと、生き生きと演技しておるのだ……見れば見るほどに魅せられてしまう。
彼女は、一体何者なのだろう)
少年は、自分が初めて年相応な感情を抱いている事に、初恋をしている事に気づいていなかった。
馬に跨がり都を闊歩する、ひとりの長髪の少年がいた。
美しい顔立ちをひときわ目立たせる華美な衣装を身に纏い、一見非常に恵まれているかのように見える。
しかし彼は、憂鬱顔だった。
(我は…父上のおっしゃる通り、ひたすらにこの道を歩んで来た……。
幼き頃より夜も寝ず学問に励み、科挙に合格し、官吏として宮殿へ勤め‥‥。
宰相とて、楽になれたものではない。
それなのに……それなのに………)
――『茅様ほどの天才であれば、科挙に受かる事くらいわけもなかろう』
――『茅様のお父様はご立派な官吏ですもの。
跡目を継いで出世されるのくらい、当たり前ですわよね?』
(―――ふざけるな!!成功するのが当然だと思うな!!
あの親の子孫の癖にと言われぬ為にも、親族の顔に泥を塗らぬ為にもやってきただけだ!
当然だと思うな…当然だと思うな!!
昔からそうだ、誰一人として我が努力を見てくれた者などいなかった……。
…貴族であれば、これが必然なのだろうか…。
独り、耐え忍び、家柄やしきたりにがんじがらめにされる事が‥‥)
何やら賑やかな音が聞こえ、ふと横を見ると、そこは雑技団の公演場だった。
(…気分転換に、見ていくか。
たまには、供を連れずにこういう楽しい物を鑑賞したい)
静かに馬を止め、少年は公演場の中に足を踏み入れた。
中は観客で込み合っており、空いた席を見つけるのに若干時間を費やした。
だいぶ人気の雑技団なのだろう。
やがて雑技が始まり、観客達と共にそれに見いった。
女性達の演じる、きらきらとした美しい雑技の世界。
その中でも、ひときわ輝く少女の姿に少年は目を奪われた。
(なんと、生き生きと演技しておるのだ……見れば見るほどに魅せられてしまう。
彼女は、一体何者なのだろう)
少年は、自分が初めて年相応な感情を抱いている事に、初恋をしている事に気づいていなかった。