第9章 迷いの心、誓いの絆

あれから10年の後。
マナの女神とエステレラのとった今後の方針は、己を見つめ自分を鍛え直すという物だった。
これまでの修行とは違い、自分の殻を打ち破らねばならない。
かなり時間を要し難しい事でもあるが、これが悪魔に弱みを握られない為の強さに繋がるのだとマナの女神とエステレラは言う。
勿論、世界を見守る仕事も続けながら。

「本当に、難しい……10年たっても、答えは見付からない」
溜め息をつき、ミンウは外に接する部屋から花弁の舞う青空を見上げた。
「ほんまに、そうやね。自分の殻を破るのは苦しい事やわ」
「魔法で大人の姿になれるようになっても、僕達結局は子供なんですね…。
早く、悪いモノは断ち切らないといけないのに」
ミンウは、自らに苦笑するような表情を隣のエディに向けた。
「せやね。わいも未だに、後悔せぇへんとか言うて、お父様やお母様の事が忘れられんもんな。
…あーあっ、イヤやわイヤやわ!
わい子どもっぽいったらありゃしない。なっさけない!!」
「…僕のお父さんとお母さんは、優しい人達でしたよ」
投げやり気味に言うエディを馬鹿にする事も慰める事もせず、ミンウはそっと穏やかに言った。
「僕も、忘れられません。
おぶられて感じた、あったかい背中を。
夜に、聴かせてもらった子守唄を……」
その横顔があまりに儚くエディは感じた。
「失った原因は、自分‥、なんですけど。
それでもまだ、あの人達が好きです。
‥‥エディさんのご両親は?どんな方なんですか?」
「‥せやな…。
お父様は…、口数の少ない真面目な方で…。お母様は、音楽のお好きなとてもお美しい方やった。
お二人は、とてもお忙しかったけれど。
たまに、ピアノやバイオリンの練習を聴いて下さったで。
お母様とは、ピアノの連弾もしたかな。
それも、ほんの僅かな間やったけど。嬉しかったな」
エディは、二度と戻れぬ懐かしい日々を慈しむように、伏せた目を細める。
「彼らがわいを育てて下さったのは、跡取りが必要やったからというのはわかっとっても‥。
貴族として以外のわいは、不必要やと知っとっても‥‥。
…一度でいい。あの人達に、抱き締めて欲しかったんやと思う……」
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