第8章 "甘さ"の犠牲
「じゃあね、美しい子ども達」
「お待ちなさい!!」
イルカがチョルくんを助けようと四天王のほうに向かい駆け出すも、時劾に遅し。
四天王はチョルくんを連れて消えてしまっていた。
「…消え…。た……」
顔面蒼白のコルちゃんが呟く。
「…地獄に、瞬間移動したんだ」
エステレラが、静かに言った。
「わからない。奴ら、何のためにチョルくんを……。
彼は、マナの者でもなんでもないのに……」
「…わたくしも、地獄に行きますわ」
「ダメだよ、イルカ…!気持ちはわかるけど、今は冷静にならないと!!」
「あの子が、何をしたと言いますの?!
地獄に堕とされるような事など…なんの罪もありませんのよ!?
大切な家族が拐われて、冷静になれる者がどこにあって?!!
わたくしは、もう二度とあの子をひとり遠くに置いて行きたくないの!!」
イルカは、自分を諌めようとするエステレラに、別人のように大きな怒声を浴びせた。
その目には、涙が滲んでいる。
(イルカ……)
「…………」
皆が沈黙するなかで、あゆむが彼女に歩み寄る。
「…とりあえず、この事を聖域のマナの女神にご報告しよう。
きっと、何か策を練って下さるハズだよ」
そんな中、アダムはひとり別の事を考えていた。
(もう、見たくないのに。
家族を奪われる姿なんて……)
イルカの姿が、遠い昔の自分に重なったのだ。
戦争で敵に両親を殺され、姉を拐われた時の自分と。
―――『やめてよ!!パパとママだけでなく、お姉ちゃんまでも奪うつもりなの?!
ひとりは嫌だ!
ふざけるな!!お姉ちゃんを返せ――――――ッ!!!』
(そうだ。あの時、ボクもイルカとおんなじように怒ってた……。
…仲間にだけは、そんな思いをしてほしくなかったのに…。必ず、チョルくんは助けなきゃ)
あの時は無力で誰も救えなかったが、今は違う。
アダムはグレーの瞳に意志を刻み、床を蹴り浮かび上がった。
「そうと決まったら、早く行こうよ。
これ以上何かあってからでは遅いんだ」
「お待ちなさい!!」
イルカがチョルくんを助けようと四天王のほうに向かい駆け出すも、時劾に遅し。
四天王はチョルくんを連れて消えてしまっていた。
「…消え…。た……」
顔面蒼白のコルちゃんが呟く。
「…地獄に、瞬間移動したんだ」
エステレラが、静かに言った。
「わからない。奴ら、何のためにチョルくんを……。
彼は、マナの者でもなんでもないのに……」
「…わたくしも、地獄に行きますわ」
「ダメだよ、イルカ…!気持ちはわかるけど、今は冷静にならないと!!」
「あの子が、何をしたと言いますの?!
地獄に堕とされるような事など…なんの罪もありませんのよ!?
大切な家族が拐われて、冷静になれる者がどこにあって?!!
わたくしは、もう二度とあの子をひとり遠くに置いて行きたくないの!!」
イルカは、自分を諌めようとするエステレラに、別人のように大きな怒声を浴びせた。
その目には、涙が滲んでいる。
(イルカ……)
「…………」
皆が沈黙するなかで、あゆむが彼女に歩み寄る。
「…とりあえず、この事を聖域のマナの女神にご報告しよう。
きっと、何か策を練って下さるハズだよ」
そんな中、アダムはひとり別の事を考えていた。
(もう、見たくないのに。
家族を奪われる姿なんて……)
イルカの姿が、遠い昔の自分に重なったのだ。
戦争で敵に両親を殺され、姉を拐われた時の自分と。
―――『やめてよ!!パパとママだけでなく、お姉ちゃんまでも奪うつもりなの?!
ひとりは嫌だ!
ふざけるな!!お姉ちゃんを返せ――――――ッ!!!』
(そうだ。あの時、ボクもイルカとおんなじように怒ってた……。
…仲間にだけは、そんな思いをしてほしくなかったのに…。必ず、チョルくんは助けなきゃ)
あの時は無力で誰も救えなかったが、今は違う。
アダムはグレーの瞳に意志を刻み、床を蹴り浮かび上がった。
「そうと決まったら、早く行こうよ。
これ以上何かあってからでは遅いんだ」