第8章 "甘さ"の犠牲

(…チョルくん…)
彼の思いがけない言葉に、エステレラは思わず目をみはった。
「あいつらは、ヌナは化け物じゃなか!!取り消しんしゃい!!」
チョルくんは、ルシファーの手を振り払い重く素早い渾身の蹴り技を放つ。
しかし、
「そう何度もくらうと思うかい?悪魔をなめちゃいけないよ」
スッと間一髪の間合いでかわされてしまう。
(クッ、相手が人間やったら今ので決まっとったのに‥‥!!)
その時。
「あんた達、うちの仲間に何してるのよ!!」
マナの一族15人が、地上から帰って来た。
「皆!!」
「テチョル、エステレラ!大事ないか?!」
「うん、マオ。チョルくんも僕も無事だよ」
「何が目的かは知らぬが……、始末せねばならぬな」
ヒミコが片手に魔力を溜め、皆が一斉に各自の武器を構え魔法を放とうとする。
しかし、
「あら。これでも、手が出せるのかしら?
おチビちゃん達」
なんとアスデモスが、チョルくんを自分達の前に来るように瞬時に鎖の魔法で縛り固定したのだ。
「「「!!!!」」」
マナの一族達は驚き、慌てて魔力を消し武器を下ろした。
「あなた達、わたくしの大切な弟に何を!!!」
その行為に怒りの頂点に達したイルカが叫ぶ。
「くっ、卑怯者め…これでは、こちらから攻められないのである…!」
「構わんし!!チョルくんなんか眼中からはずして、さっさとこいつらやっつければ良か!!
――ぎあッ‥‥!!」
ギリギリと魔法で出来た鎖で締め上げられ、チョルくんは顔を歪め小さく悲鳴を上げる。
「できるわけないじゃないですか!!
僕達は、お友達です!仲間ですよ?!」
ミンウが涙目で叫ぶ。
「せや!チョルくんを放せ!!
自分ら、ええ大人のくせにコドモいじめて恥ずかしないんか?!」
エディも叫んだ。
「フフ。ヘルデウス様のおっしゃった事、本当ね。
コイツらの弱点は、“愛や友情にすがる甘さ”って」
「ほんと、甘々っすね。てゆうかお子様なんてそんなもんす」
アスデモスが嘲笑し、ベルフェーゴルも嘲るように言った。
「ねえ、かわいそうだからもう地獄に連れてってあげようよ。
鎖の魔法って、かなり痛いじゃん…?さすがにダメだよ」
苦い顔をしながら、ベルゼバブが他の四天王に提案する。
「そうね。ベルベル。やっぱ、児童虐待はよくないわよね」
そう言いアスデモスは魔法を解き、くたりと体力を失ったチョルくんを抱えた。
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