第8章 "甘さ"の犠牲

「なっ、なんね?!お前ら!!」
「初めまして。私達は四天王。
悪魔の王、ヘルデウス様にお仕えするサタンよ」
アスデモスは、美しい顔で不敵に笑む。
「うーん、地上ほど遠くなら、あたい達の気配を悟られる事もないかな?」
「そうだね。ベルゼバブ嬢。
これなら、仕事がしやすいというものだ」
「?仕事…?」
不可解な単語に、チョルくんは片眉を吊り上げる。
「こん神殿に、なんの仕事ばしに来よったと。
チョルくんは、お前らにはなんも用事なかよ。はよ帰らんね」
「おいら達のほうは、おめえに用があるんすよ。
だから、イヤでも帰らんねえんす」
ベルフェーゴルはだるそうに言った。
「は?チョルくんに……?」
「そうなの、あたい達あなたを連れて来てねってヘルデウス様に言われてるの?
だからあたい達と来て欲しいなー」
ベルゼバブが愛想よく言う。
「なっ……?!!」
チョルくんは、驚き目を見開いた。
「なっ、なして!?」
「君を、人質に使おうというわけさ。地獄のね‥」
ルシファーの声音に、ゾクッと冷たく戦慄が走る。
震える足をグッと踏ん張り押さえ、チョルくんは四天王を睨み付けた。
「やだし!!チョルくんは行かん!!」
「!!」
チョルくんの放った足技が、ルシファーの右頬を掠める。
そこは一筋状に切れ、ツーッと青い血が滴り落ちた。
「おや手厳しい。
君のような美しい人間なら大歓迎なんだけどねえ」
「チョルくんは、どこにも行かんし!!
ヌナとあいつらん為に、こん神殿ば守るんだし!!」
「別に神殿にはきょーみないよー。
あなたさえ来てくれれば、それでいいんだってばぁ」
ベルゼバブが困り顔になる。
「はあ‥‥。めんどくさいガキっす。
こうなりゃ、力ずくでいくっすか。アニー」
「そうね、フェル。行くわよ」
ベルフェーゴルとアスデモスが互いの手を前に掲げ、重ね合わせる。
すると、二人の掲げた手の前から膨大な黒いエネルギーが集まりゆく。
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