第8章 "甘さ"の犠牲

「よし、俺は倭区域に行くぞ倭区域に」
「ホト、私も共に参ります」
「あたしも!」
そして倭区域には、ホト、マナ、みほで行く事になったようだ。
「コリア区域には、わたくしとヒミコさんとあゆむさんで行きましょう」
「うむ。インディ区域は、最後に全員で廻ろうぞ」
「チカラになれるよう頑張るよ」
「……皆様、お決まりになりましたね。それでは、地上に降りましょう」
マナが意を決した眼で言った。
「…お前ら、ちゃんと帰って来いよな。
ケガとかしよったら、マジ許さんけんね」
「あったり前よ!こういう時の為に、皆鍛えて来たんだから?」
「そうそう?どんだけ超修行してきたと思ってるの?」
心配そうなチョルくんを、みほとシアンが力強く安心させるように言う。
「お願いね。チョルくん」
イルカがそっと頭を撫でつつ言うと、チョルくんは小さく頷いた。
「‥姫様‥。もういなくならないで、必ず帰って来てつかあさいね。
チョルくん、姫様がおらんと……」
「当然ですわ。約束します」
「じゃあね、チョルくん。僕達、行って来ますね」
「うっ、うん!‥しっかりやれよなし!」
マナ一族達が神殿から飛び去ってゆく様子を、チョルくんは無表情で見届けた。
(きっと、エステレラも用もなかのに来たりせん……チョルくんひとりで、こん神殿ば守らんといかん。
あいつらは、チョルくんば信じてお留守番任せてくれたんだし)
「…どんとこいだしっ!!」
自らの背中を押すように意気込み、チョルくんは部屋の隅にぺたりと腰かけた。
“やーんちょっと、チャンスだよ!
マナの一族、地上にいなくなった!!”
「――!?」
どこからともなく聞こえる声に、チョルくんは思わず立ち上がりキョロキョロと辺りを見渡す。
“まっさか、ないとは思ってたんすけどねぇ‥‥幸運ってやつっすか?”
謎の声は、まだ続く。
“ホント馬鹿よね、あいつら。人間が悪魔にかなった試しがあって?”
“仲間を信じすぎるのも、困りものだねえ。ではとりあえず、お仕事しようではないか?”
声が止んだかと思った、次の瞬間。
チョルくんの目の前に、音もなく四人の黒い翼を携えた者が立っていた。
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