第7章 愛する理由

そして、聖域では。
『まあ楽しそう。私も一緒に“いただきます”しに参りましょうかしら』
「…マナの女神…」
楽しげに微笑むマナの女神と、千里眼をそんな用途に使うなよとツッコミたい気分のエステレラがいた。

一方、その頃。
常に空の黒い、薄暗い世界“地獄”。
城の玉座の間では、ヘルデウスが悪魔達に“四天王”と呼ばれる四大幹部を城に召喚していた。
緩やかな黒髪に長身の青年がルシファー、ぼんやりとした面構えのノンビリとした雰囲気を纏う青年がベルフェーゴル。
チーズを片手に口をモグモグと動かしているややぽっちゃりとした悪魔がベルゼバブ。
ちなみにれっきとした若く麗しき女性だ。
豊満な胸に美しい容姿を持つ美女がアスデモス。
彼らは、地獄の王ヘルデウスに仕え下のサタン達を管理している悪魔だ。
「よく来てくれたな。お前達…」
黒いマントを纏った男――ヘルデウスは、威厳に満ちた声で言った。
「はっ…」
ルシファーが恭しくお辞儀をした。
「ちょっとベルベル、ヘルデウス様の前でくらい食べるのやめたらどう?
あんた24時間パクパクやらかしてんでしょ。わたしゃ知ってんのよ」
「ああん、あたいのチーズ取り上げないでアニーお姉様!
しょうがないじゃん、おなかすくもんは~」
「ベルゼバブにチーズを返してやれ。アスデモス。
それくらい、別に良い」
「ヘルデウス様が、そうおっしゃるなら…」
「やーん、嬉しいっ!ありがとうございますヘルデウス様!お礼に半分いかがですかっ?」
「いや……。
(食べ物を取り上げると五月蝿いのだしな、コイツは…)」
笑顔のベルゼバブにヘルデウスは遠慮を見せる。
「それで~、ヘルデウス様~。おいら達になんの用なんすかぁ?
早く話しちゃって下さ~い。待つのめんどくさい」
ベルフェーゴルが上司に対しあからさまにダルそうだが、ヘルデウスは特に咎めもせず頷いた。
勘弁してもらえたのは、彼が怠惰を司る悪魔だからだろう。
ちなみにルシファーが傲慢・高慢を、ベルゼバブが暴食を、アスデモスが色欲を司る悪魔である。
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