第7章 愛する理由

「…がんばらなくても、無条件に愛してくれる奴だっているぜ」
タオはポツポツと語り始めた。
「俺とチェン、同じ出身地なんだけど……。小さい頃、マナのチカラが目立ち始めてきてな。
危険な目に遭って、ずっと二人で生きてきたんだよ。
生きる為なら、盗みでもなんでもやってきた。…チェンが死ぬよかは、自分の手が汚れたほうがいいしな」
「二人で遊んでたら、たまたま、大人達の寄り合いのお話を外から聞いてしまってね‥‥。
タオのお父さんと、私のお母さんが言った事を…」
――“息子愛しさに、この地を滅ぼそうとは思わん。
煮るなり焼くなり好きにするがいい”
――“私も、同意です。娘が人間じゃなくなるだなんて、今までが覆されるかのようで耐えられないわ‥‥”
「酷いよね。私達、マナの一族ってだけでなんにも悪い事してないのに……。自分とちょっとでも違うとのけ者にするのが、人間の悪いところだよね…。
そのまま私達、二人であてもなく飛び出しさ迷って生きてきたの。
私は故郷なんかより、タオのほうが大切だから良かったけど、そのタオから笑顔が失われてゆくのだけは耐えられなかった」
チェンは切なそうに目を伏せる。
「大好きだった親に裏切られた事が悔しくて、哀しくて…暫く何年間も、荒みきっていたんだ。
他人なんか、心から信じるものかって………。
でも、そんな俺でもチェンはずっと側にいてくれた。
私はタオの味方だよって。
だからイルカだって、きっとどんなチョルくんでも無条件に愛してくれてると思うぞ!」
「私、タオの笑顔大好き。
彼に、それを思い出させてくれたマオに感謝してるの。
イルカだって、同じだよ。チョルくんの全部が大好き!」
「…そう、かなあ」
二人に励まされ、チョルくんは少し元気を取り戻した。
5/10ページ
スキ