第7章 愛する理由

「イルカ……」
「ねえ、みほ。わたくしは…あの子を追う資格があるのかしら……。
あの子を置いていったのは、わたくしですのに………」
彼女の白くしなやかな手は、後悔に震えていた。

(‥まずったし‥‥‥)
チョルくんはひとり、神殿内の広い廊下で途方にくれていた。
(ここ、どこと……?皆んとこ帰る道のわからん‥‥)
そう考えたところで、先程の出来事を思い出した。
あれだけの事をすれば、帰るに帰れない。
皆と顔を合わせるのが気まずすぎる。
「どげんしよ……どげんしよう」
じわりと大粒の涙が滲んだ時、
「あーっ!あそこにいてるで!」
「良かったあ、見つかって…!」
「おーい!チョルくーん!!飯食いに戻ろーぜーっ!!」
エディ、チェン、タオがやってきた。
走ってきたのだろうか、三人とも肩で息をしている。
「私達、もう気にしてないから帰ろうよ?」
チェンは、呼吸を整えながら優しく言った。
「…だって、チョルくん……」
チョルくんの様子から、エディはある事を察した。
「チョルくん、役に立たやないつか追い出される思っとんのやろ」
「!!?」
「それって変やない?」
「「エッ…エディ?!」」
「……ッ、お前に何がわかるんよ!!」
目に涙を溜めながら、チョルくんはキッとエディを睨み付けた。
「コリア区域ん宮殿では、チョルくんなんもしきらんかった…きっと役たたずやけんのけ者にされたんだし!!
守ってくれる後ろ楯もなかけん…がんばらんと、何かせんと、居させてもらえないんだし!
やけん……やけん………」
そう。自分は孤児。
存在を示す物さえなければ、守ってくれる大人などいない。
イルカが宮殿から旅立ち去った時、宮殿内で囁かれた言葉が、今も耳に染み付いて離れない。
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