第6章 自分の身を守るものは…

「おなか‥へった‥‥‥」
ぐきゅ~と腹の虫を鳴かせながら、アダムはパタリと神殿の床に倒れこんだ。
「ちょっとアダムくん~、どこに寝転んでるの。超ダメじゃないのー」
アダムの行為を見兼ねたシアンが、苦笑しながら注意した。
「そんなコト言われたって、おなかがすいてチカラが出ないんだもん。
今日は消化がやけに早いんだ…オーマイガー…」
「不思議やなぁー…。マナの一族もおなかは減るんよな。
お前ら人間じゃなくて精霊やけん、じかに会うまでは食わんでも生きていけるんかっちチョルくん思っとったし…」
「そないなコトゆうて…。
わいらはチョルくんら一般人が想像するほど、超人でもあらへんねんよ?」
エディはチョルくんの言葉に苦笑した。
「エディオニール・フランソワ・ド・ラフォレ・ダンジェラードには聞いてなか。」
(エディでええ言うとんのに……わざわざフルネーム呼びって、わいやマオきらわれとるんやろうか)
どうやら、チョルくんにフルネーム呼びされているのはエディだけではないらしい。
(チョルくんは本当に嫌っている方には、一切クチをききませんのよ。byイルカ
「仕方のない奴…我が輩が、地上から食材を調達してきてやるのである。
それでいいであろう」
若干眉間にシワを寄せつつ助け船を出したイリスェントに、アダムは上体を起こし顔色を明るくした。
「本当にいいのかい?!ありがとう!!」
「空腹のつらさは、我が輩も知っているのでな…。
では、行ってくるのである」
フワリと空中に浮かび神殿を後にしたイリスェントに手を振りながら、アダムは呟いた。
「……信じられないや……。
あの石頭のイリスェントが、自らパシリに志願した…」
「確かに頭は固いけど、思いやりも超あるんだよあの子は。
きっと、ほっとけなかったんじゃない?」
イリスェントの飛んでいった方を見つめながら、シアンはアダムの頭を撫でた。
(…あれで血も涙もない世界に住んでいただなんて、ほんと嘘みたい。
出会った時は超冷酷な軍人だったなんて子孫達に言っても、誰が信じるかな)
シアンは、遥か2000年前イリスェントと出会った日の記憶を追想する。
――本当に、あの頃より変わった。
1/6ページ
スキ