第5章 予期せぬ危機、予期せぬ出逢い
一方、その頃――。
コリア区域の出口を、一人の少年が一心に駆け抜けていた。
年の頃は10歳程度だろうか。
おかっぱに切りそろえた黒髪を揺らし、身に纏ったパジチョゴリが小雨で濡れるのも厭わずに。
(姫様…どげんすれば、会えると‥‥っ?
どこに行けば…………)
「誰かを、探しているのかい?」
「!!?」
不意にかけられた声に、少年はバッと後ろを振り向いた。
そこには、翼の生えた美しい少年が立っていた。
まるで、天使のように優しい印象で、小雨が振っているというのにまるで濡れていない。
「…だっ…誰なん……?」
黒髪の少年が身構えるように訊ねると、天使のような不思議な少年が名乗った。
「驚かせてごめんね。僕は、エステレラ。マナの女神の右腕だ。
…君は、コリア区域の子だね。名前は、なんというんだい?」
不思議ではあるも穏やかなエステレラに若干警戒心を解いたのか、黒髪の少年も口を開く。
「…クォク・テチョルだし。
チョルくん、“マナ”ば許さなか……そんなのがあるけん、姫様は……チョルくんのヌナ(姉さん)は…。
マナのチカラなんかに目醒めて、宮殿ば出ていきよってしもたし………」
テチョルと名乗る男の子は、ぐっとこみあげるモノを押し込めるように眉間に皺を寄せ唇を噛み締めた。
「でも、“マナ”が満ち溢れているからこそ、世界は成り立っているんだよ」
「……………」
「……そうか。君は、その女性を探しているんだね。
もしかしてその女性は、イ・シェムルカと呼ばれていなかったかい?」
「!なしてわかると?!」
パジチョゴリの少年は目を見開いた。
「コリア区域のお姫様といえば、彼女じゃないか?」
そう言い、エステレラは微笑った。
「君は、本当に姫が大切なようだね。
もし良ければ、彼女のもとに連れていってあげるよ」
「ほんとに?!」
「ああ。ただし、行ったところで彼女の役に立てるかどうかは君次第だけど……どうする?」
コリア区域の出口を、一人の少年が一心に駆け抜けていた。
年の頃は10歳程度だろうか。
おかっぱに切りそろえた黒髪を揺らし、身に纏ったパジチョゴリが小雨で濡れるのも厭わずに。
(姫様…どげんすれば、会えると‥‥っ?
どこに行けば…………)
「誰かを、探しているのかい?」
「!!?」
不意にかけられた声に、少年はバッと後ろを振り向いた。
そこには、翼の生えた美しい少年が立っていた。
まるで、天使のように優しい印象で、小雨が振っているというのにまるで濡れていない。
「…だっ…誰なん……?」
黒髪の少年が身構えるように訊ねると、天使のような不思議な少年が名乗った。
「驚かせてごめんね。僕は、エステレラ。マナの女神の右腕だ。
…君は、コリア区域の子だね。名前は、なんというんだい?」
不思議ではあるも穏やかなエステレラに若干警戒心を解いたのか、黒髪の少年も口を開く。
「…クォク・テチョルだし。
チョルくん、“マナ”ば許さなか……そんなのがあるけん、姫様は……チョルくんのヌナ(姉さん)は…。
マナのチカラなんかに目醒めて、宮殿ば出ていきよってしもたし………」
テチョルと名乗る男の子は、ぐっとこみあげるモノを押し込めるように眉間に皺を寄せ唇を噛み締めた。
「でも、“マナ”が満ち溢れているからこそ、世界は成り立っているんだよ」
「……………」
「……そうか。君は、その女性を探しているんだね。
もしかしてその女性は、イ・シェムルカと呼ばれていなかったかい?」
「!なしてわかると?!」
パジチョゴリの少年は目を見開いた。
「コリア区域のお姫様といえば、彼女じゃないか?」
そう言い、エステレラは微笑った。
「君は、本当に姫が大切なようだね。
もし良ければ、彼女のもとに連れていってあげるよ」
「ほんとに?!」
「ああ。ただし、行ったところで彼女の役に立てるかどうかは君次第だけど……どうする?」