第4章 後悔なき道

「本当のミンウ…?」
「…はい……。本当の僕は、罪にまみれていて…みんなと笑っている事すら許されないのかもしれない…そんな男なんです…。
それでも……、優しくしてくれますか?」
犯した罪は、孤独で償おうとしていた。
そう、仲間達と出会うまでは。
みほやエディが助けてくれた事が嬉しくて、存在を認めてくれた事が嬉しくて、不思議なほどに笑顔を取り戻せていたのだ。
「当然やん?ミンウが心から罪人やったら、わいとみほをモンスターから救ってくれたりはせぇへんかったやろ?」
「あの時は、…自然と、体が動いてたんです。
見捨てちゃ、いけないって。‥‥見捨てないで、本当によかった」
「見捨てんといてくれておおきに。
誰がなんと言おうと、ミンウはええ子や!
例え本当のミンウがどんな奴だとしても、わいはミンウを信じ続けるで」
「…謝謝…」
ポタポタと頬を伝う温かな雫を、袖で拭いながらミンウは頷く。
エディは、彼の小さな頭をよしよしと撫でた。
「…ミンウばかりに話させるわけにはいかへんよな。
なあ。実際、昔のわいもな、ほめられたモンやないんやで?」
「‥エディさんが…?」
「ああ。世界にも人生にも、周囲にも、なーんも感じとらん奴やった。
どーしよーもあらへんかったわ」
伝来ハカセと、出会うまでは…。

7年前、アムール区域の金や銀に溢れた巨大な屋敷。
そこには、由緒正しき貴族であるラフォレ・ダンジェラード家が住んでいた。
そのひとり息子は、家柄に縛られた教育により、身も心も疲れ切って生きていた。
ひたすら学問やダンス、剣術や音楽、作法などのつらい稽古に耐え、厳しい両親の目を、周囲の目を気にしながらの生活。
気が付けば子どもらしさなど、とうに消え失せていた。
夜会で宝石に囲まれさざめく笑い声のなかダンスを踊り明かすも、心からの楽しさなど感じられない。
常に付きまとう、どこかむなしい虚無感。
そんななか、彼はあの少年に出逢った。
2/8ページ
スキ