エピローグ~新たなる世界~
倭区域。
貴族の屋敷の縁側で、二人の少年少女が語らっている。
少年は癖のついた総髪が簡素ながら洗練された和服によく映え、少女は美しい十二単に身を包んでおり、それぞれ、武士と貴族である事が窺える。
「それでよマナ、明日になったら城で花見が開かれるんだ花見が!
町民にも庭を解放するようお触れを出したから、きっと貴族も良いんじゃないかな。
だから、良かったらマナも来ないか?」
マナと呼ばれた少女は、嬉しそうに「まあっ…」と小さく感嘆の声を漏らした。
「勿論です!嬉しいわ…。
やはり、ホトのお仕えするお殿様はご立派なお方ですね。
皆から慕われているだけあります」
「そうだろそうだろ!なんたって、上様だからな!」
ホトと呼ばれた若侍の少年は、主君を褒められた事に我が事のように喜び笑む。
「それではな!そろそろ奉公に行って参るよ。
また、菓子でも持って遊びに参る」
「ええ。お気を付けて」
小さく手を振りホトを見送りながら、マナは考えた。
今の優しく気の良い殿様ならば、貴族と武士の結婚を許してくれるかもしれない。
叶うかどうかも定かではない結婚を約束した自分達だが、もしかしたら…。
ホトも、身分ではなく能力や中身を買われ小姓に抜擢されたのだから。
そんな明るい可能性や未来を。
希望を胸に抱きながら、マナは蹴鞠を楽しむ子供たちの声を聞きつつ縁側から空を見上げた。
「春、ですねえ‥‥」
舞台は移り、城下町。
城へ向かうホトが道を歩いていると、後方から馬の蹄の音が耳に入る。
音は、ホトのすぐ近く後ろで止んだ。
静かな声と共に。
「そこの者。止まれ」
「…何用だ?」
振り向けば、馬に乗っているのは、自分とさほど変わらぬほど若い男女だ。
かかった声は、少年のモノに相違ない。
二人とも美花区域の服装をしており、上位の者が纏う衣を着ている。
身分の高い者―――貴族だろうか?
「何奴だ?名乗れ、それから用件を聞いてしんぜよう」
「我は、戴茅。マオと申す。
美花区域の宰相だ。
こちらの殿様に巻物を献上しに、美花区域より参った」
少年――マオは、隙を見せず冷静沈着にホトに自己紹介する。
次に、彼の後ろに座る少女が自己紹介した。
対称的な、周囲をも明るくするような笑顔で。
「ボクは戴香!シアンです!
マオくんの妻だよ」
貴族の屋敷の縁側で、二人の少年少女が語らっている。
少年は癖のついた総髪が簡素ながら洗練された和服によく映え、少女は美しい十二単に身を包んでおり、それぞれ、武士と貴族である事が窺える。
「それでよマナ、明日になったら城で花見が開かれるんだ花見が!
町民にも庭を解放するようお触れを出したから、きっと貴族も良いんじゃないかな。
だから、良かったらマナも来ないか?」
マナと呼ばれた少女は、嬉しそうに「まあっ…」と小さく感嘆の声を漏らした。
「勿論です!嬉しいわ…。
やはり、ホトのお仕えするお殿様はご立派なお方ですね。
皆から慕われているだけあります」
「そうだろそうだろ!なんたって、上様だからな!」
ホトと呼ばれた若侍の少年は、主君を褒められた事に我が事のように喜び笑む。
「それではな!そろそろ奉公に行って参るよ。
また、菓子でも持って遊びに参る」
「ええ。お気を付けて」
小さく手を振りホトを見送りながら、マナは考えた。
今の優しく気の良い殿様ならば、貴族と武士の結婚を許してくれるかもしれない。
叶うかどうかも定かではない結婚を約束した自分達だが、もしかしたら…。
ホトも、身分ではなく能力や中身を買われ小姓に抜擢されたのだから。
そんな明るい可能性や未来を。
希望を胸に抱きながら、マナは蹴鞠を楽しむ子供たちの声を聞きつつ縁側から空を見上げた。
「春、ですねえ‥‥」
舞台は移り、城下町。
城へ向かうホトが道を歩いていると、後方から馬の蹄の音が耳に入る。
音は、ホトのすぐ近く後ろで止んだ。
静かな声と共に。
「そこの者。止まれ」
「…何用だ?」
振り向けば、馬に乗っているのは、自分とさほど変わらぬほど若い男女だ。
かかった声は、少年のモノに相違ない。
二人とも美花区域の服装をしており、上位の者が纏う衣を着ている。
身分の高い者―――貴族だろうか?
「何奴だ?名乗れ、それから用件を聞いてしんぜよう」
「我は、戴茅。マオと申す。
美花区域の宰相だ。
こちらの殿様に巻物を献上しに、美花区域より参った」
少年――マオは、隙を見せず冷静沈着にホトに自己紹介する。
次に、彼の後ろに座る少女が自己紹介した。
対称的な、周囲をも明るくするような笑顔で。
「ボクは戴香!シアンです!
マオくんの妻だよ」