第17章 幸せをありがとう
「今度は、パパとママと…。暮らせるかな…。
戦う事など、しないで……銃声など聞かないで…ずうっと……」
イリスェントは、クローゼットから的を集めながら、小さな声で口にした。
気丈にきびきびとした彼が、子孫の前で、涙を見せながら。
その姿は、どこにでもいる“子ども”そのものだった。
「…ふ……うぅっ」
「…きっと、暮らせるよ。絶対、暮らせる」
アダムは、いつもより小さなイリスェントの背中をポンポンと叩いた。
「ボクも、生まれ変わったらお姉ちゃん達と楽しく暮らすんだ。
きっと、戦争なんか起きないよ」
「そうですよ。女神様は、ウソつきませんもの。
わたしも……、幸せになります。
でも、今はイリスェントさんの側にいたいです」
強く勇ましい先祖。
けれど、戦いが好きという訳ではなかった優しい先祖。
胸を締め付けられ、コルちゃんは彼を忘れたくないと強く感じた。
それは、アダムも同じだった。
「ボク、来世ではイリスェントとコルちゃんと友達になれない……。
けど、イリスェントみたいに強く、コルちゃんみたいに優しく生きていく」
「わたしも……、イリスェントさんみたいに強く、アダムさんみたいに行動的になります」
「我が輩もなのである!
アダムやコルちゃんのように…、素敵な人間になる……」
目に涙を溜めたまま、三人は手を重ね合わせ、約束した。
例え記憶を失おうとも、これだけは守りきれる自信のある約束を。
「「「みんな必ず、幸せな人間に」」」
「お主はなぜ地味なのじゃ?」
「え…なに急に」
唐突に出されたヒミコからの質問に、あゆむは苦笑いするしかない。
「いや。まだ時間のあるうちに、訊いておこうかと思っての」
「あ、そうなんだ…。
僕が地味なのは、いつでも農作業ができるように、汚れてもいい服装でいるからかもしれないや。
うーん。僕って、そんな地味かなぁ……?」
「おお、自分を知らぬとは恐ろしい事じゃ」
ヒミコはニヤリと意地悪い笑みを浮かべる。
「ひどいなぁ、もぉ~」
あゆむは、決意した。
「来世では地味脱却してやる!」
「さあ?出来るかどうか……ほっほっほ」
イルカとミンウは、イルカの私室で地上のチョルくんの様子を視ていた。
視終わり、二人はそっと眼を開ける。
「チョルくん‥‥、コリア区域で俳優さんになってましたね。
お仕事、みっけられて良かったです」
「ウフフ……。さすがは、うちの可愛い可愛い弟ですわ」
イルカは、嬉しそうにクスクスと笑む。
「彼、すごいですねぇ。本当にひとりでもやっていけてる。
心の中に、イルカさんがいるからですね!きっと」
「まあ…嬉しいことを」
本当に、そうであったらいい。
例え触れられなくとも、お互いの心が繋がっていれば。
来世で再会する事は叶わずしも、今の絆があればそれで満足だ。
「わたくしはもう、余生に迷いはありません。
あの子を信じるのみですもの。
…ミンウさんは?」
「…僕…。僕は……」
ミンウは、俯きがちに話した。
「みんなと、お別れ、したくないです………。
今がいちばん、幸せなんですもん…」
戦う事など、しないで……銃声など聞かないで…ずうっと……」
イリスェントは、クローゼットから的を集めながら、小さな声で口にした。
気丈にきびきびとした彼が、子孫の前で、涙を見せながら。
その姿は、どこにでもいる“子ども”そのものだった。
「…ふ……うぅっ」
「…きっと、暮らせるよ。絶対、暮らせる」
アダムは、いつもより小さなイリスェントの背中をポンポンと叩いた。
「ボクも、生まれ変わったらお姉ちゃん達と楽しく暮らすんだ。
きっと、戦争なんか起きないよ」
「そうですよ。女神様は、ウソつきませんもの。
わたしも……、幸せになります。
でも、今はイリスェントさんの側にいたいです」
強く勇ましい先祖。
けれど、戦いが好きという訳ではなかった優しい先祖。
胸を締め付けられ、コルちゃんは彼を忘れたくないと強く感じた。
それは、アダムも同じだった。
「ボク、来世ではイリスェントとコルちゃんと友達になれない……。
けど、イリスェントみたいに強く、コルちゃんみたいに優しく生きていく」
「わたしも……、イリスェントさんみたいに強く、アダムさんみたいに行動的になります」
「我が輩もなのである!
アダムやコルちゃんのように…、素敵な人間になる……」
目に涙を溜めたまま、三人は手を重ね合わせ、約束した。
例え記憶を失おうとも、これだけは守りきれる自信のある約束を。
「「「みんな必ず、幸せな人間に」」」
「お主はなぜ地味なのじゃ?」
「え…なに急に」
唐突に出されたヒミコからの質問に、あゆむは苦笑いするしかない。
「いや。まだ時間のあるうちに、訊いておこうかと思っての」
「あ、そうなんだ…。
僕が地味なのは、いつでも農作業ができるように、汚れてもいい服装でいるからかもしれないや。
うーん。僕って、そんな地味かなぁ……?」
「おお、自分を知らぬとは恐ろしい事じゃ」
ヒミコはニヤリと意地悪い笑みを浮かべる。
「ひどいなぁ、もぉ~」
あゆむは、決意した。
「来世では地味脱却してやる!」
「さあ?出来るかどうか……ほっほっほ」
イルカとミンウは、イルカの私室で地上のチョルくんの様子を視ていた。
視終わり、二人はそっと眼を開ける。
「チョルくん‥‥、コリア区域で俳優さんになってましたね。
お仕事、みっけられて良かったです」
「ウフフ……。さすがは、うちの可愛い可愛い弟ですわ」
イルカは、嬉しそうにクスクスと笑む。
「彼、すごいですねぇ。本当にひとりでもやっていけてる。
心の中に、イルカさんがいるからですね!きっと」
「まあ…嬉しいことを」
本当に、そうであったらいい。
例え触れられなくとも、お互いの心が繋がっていれば。
来世で再会する事は叶わずしも、今の絆があればそれで満足だ。
「わたくしはもう、余生に迷いはありません。
あの子を信じるのみですもの。
…ミンウさんは?」
「…僕…。僕は……」
ミンウは、俯きがちに話した。
「みんなと、お別れ、したくないです………。
今がいちばん、幸せなんですもん…」