第17章 幸せをありがとう
「勉強がヤになったからお父様の目を盗んでこっそり来たんだと楽しそうに話す君を見て、思っていたよ。
精霊のチカラに目覚めかけているなんていっても、嗚呼、普通の子どもだなって。
全然年相応。
こんな普通の少年が、私達と戦わされるんだなって思った」
「マナ一族は皆、年相応やで?
それがわかりやすい子と、わかりづらい子といてるけどな。
わいはわかりやすいかな?」
「はは、そっか。
うん。わかりやすいわかりやすい」
「えー、そないにー?」
「はははは」
楽しそうに笑うルシファーに、エディは思った。
かつて自分を憎悪と殺意でぎらついた眼で見て来た者と、こんなふうに楽しく会話できるだなんて。
こんなに魅力的な笑顔が作れるのだ。
悪魔と云っても本当は優しい者なのだ、と。
成る程。これは確かに、悪魔を偏見していた人類の方が良くなかったかもしれない。
「…今度こそ…。幸せになれるとええな」
「…ありがとう。
そちらこそ、お父様やお母様と楽しく暮らすんだよ」
「うん、来世では絶対親孝行するわ!
わい絶対ピアニストになるさかい、天から聴いてや?」
「ああ、もちろんだとも。
君の音楽を聴くのを、楽しみにしてる」
「うん…!ほな、もうそろそろ神殿に帰るね」
そっとピアノの蓋を閉じ、退室する直前でエディはルシファーの方を振り向いた。
曇りや淀みのない、澄んだ笑顔で。
「それではね、ごきげんよう!ルシファー!」
「ああ。ごきげんよう、エディオニール君」
ルシファーも、にっこりと爽やかなスマイルを作り小さく手を振った。
「遅かったじゃない、エディ!どこ行ってたのよ?」
「ごめんごめん。ちょっと、ハカセの研究所にいたんよ」
「全くもう…今週あたし達が食事当番なんだから、しっかりしなくちゃ!」
「せやったね、ごめんね。ほなもう準備に取り掛かりますか」
「そうしましょ」
キッチンに向かう最中、みほはポツリと口を開いた。
「…エディ」
「うん?」
「マナ一族じゃなくなっても。また…。友達になってくれる?」
「……。ああ。約束するで。
生まれ変わっても、また、みほを探す」
気が付いたら、惹かれ合っていた二人。
だからこそ、来世での再会を望むのだ。
もうこれくらいで、離ればなれになったりなど出来ない。
「生きとる時代が一緒なんや!
必ずまた会えるで?」
「そうね!女神様も、あたし達に損はさせないって言って下さったし……むしろ楽しみにしてるわ」
希望に満ちた会話。
間に流れる空気。
今この瞬間が、愛おしい。
そう思う二人だった。
一方イリスェントの部屋では、学者達がクローゼットの中の的を片付けていた。
射撃訓練用の的だが、終戦した今となってはもう必要ない物だ。
「これも、ごみ袋に入れちゃっていいんですか?」
「ああ。全部、入れてしまって構わないであるよ」
イリスェントは、コルちゃんにOKのジェスチャーを出す。
「うわ~、みんな穴だらけだ」
アダムは、使い古された的を見つめる。
「お二人とも、射撃の特訓、頑張ってましたもんね」
「へへっ!コツをわかりやすくLectureしてくれる、優しい先生がいたからね!」
「そ、そんな、我が輩は撃ち方などの基礎を教えただけで…あそこまで上達したのは、アダムが努力したからである」
イリスェントは、赤面して謙遜する。
「うふふ…。わたしも、射撃訓練参加すれば良かったですかしら…」
「コルちゃんにはマハラジャちゃんがいるじゃないか!
ねーっ、マハラジャちゃん?」
アダムは、コルちゃんの首もとにいるマハラジャちゃんに話しかける。
マハラジャちゃんも、チロチロ舌を出して答えた。
精霊のチカラに目覚めかけているなんていっても、嗚呼、普通の子どもだなって。
全然年相応。
こんな普通の少年が、私達と戦わされるんだなって思った」
「マナ一族は皆、年相応やで?
それがわかりやすい子と、わかりづらい子といてるけどな。
わいはわかりやすいかな?」
「はは、そっか。
うん。わかりやすいわかりやすい」
「えー、そないにー?」
「はははは」
楽しそうに笑うルシファーに、エディは思った。
かつて自分を憎悪と殺意でぎらついた眼で見て来た者と、こんなふうに楽しく会話できるだなんて。
こんなに魅力的な笑顔が作れるのだ。
悪魔と云っても本当は優しい者なのだ、と。
成る程。これは確かに、悪魔を偏見していた人類の方が良くなかったかもしれない。
「…今度こそ…。幸せになれるとええな」
「…ありがとう。
そちらこそ、お父様やお母様と楽しく暮らすんだよ」
「うん、来世では絶対親孝行するわ!
わい絶対ピアニストになるさかい、天から聴いてや?」
「ああ、もちろんだとも。
君の音楽を聴くのを、楽しみにしてる」
「うん…!ほな、もうそろそろ神殿に帰るね」
そっとピアノの蓋を閉じ、退室する直前でエディはルシファーの方を振り向いた。
曇りや淀みのない、澄んだ笑顔で。
「それではね、ごきげんよう!ルシファー!」
「ああ。ごきげんよう、エディオニール君」
ルシファーも、にっこりと爽やかなスマイルを作り小さく手を振った。
「遅かったじゃない、エディ!どこ行ってたのよ?」
「ごめんごめん。ちょっと、ハカセの研究所にいたんよ」
「全くもう…今週あたし達が食事当番なんだから、しっかりしなくちゃ!」
「せやったね、ごめんね。ほなもう準備に取り掛かりますか」
「そうしましょ」
キッチンに向かう最中、みほはポツリと口を開いた。
「…エディ」
「うん?」
「マナ一族じゃなくなっても。また…。友達になってくれる?」
「……。ああ。約束するで。
生まれ変わっても、また、みほを探す」
気が付いたら、惹かれ合っていた二人。
だからこそ、来世での再会を望むのだ。
もうこれくらいで、離ればなれになったりなど出来ない。
「生きとる時代が一緒なんや!
必ずまた会えるで?」
「そうね!女神様も、あたし達に損はさせないって言って下さったし……むしろ楽しみにしてるわ」
希望に満ちた会話。
間に流れる空気。
今この瞬間が、愛おしい。
そう思う二人だった。
一方イリスェントの部屋では、学者達がクローゼットの中の的を片付けていた。
射撃訓練用の的だが、終戦した今となってはもう必要ない物だ。
「これも、ごみ袋に入れちゃっていいんですか?」
「ああ。全部、入れてしまって構わないであるよ」
イリスェントは、コルちゃんにOKのジェスチャーを出す。
「うわ~、みんな穴だらけだ」
アダムは、使い古された的を見つめる。
「お二人とも、射撃の特訓、頑張ってましたもんね」
「へへっ!コツをわかりやすくLectureしてくれる、優しい先生がいたからね!」
「そ、そんな、我が輩は撃ち方などの基礎を教えただけで…あそこまで上達したのは、アダムが努力したからである」
イリスェントは、赤面して謙遜する。
「うふふ…。わたしも、射撃訓練参加すれば良かったですかしら…」
「コルちゃんにはマハラジャちゃんがいるじゃないか!
ねーっ、マハラジャちゃん?」
アダムは、コルちゃんの首もとにいるマハラジャちゃんに話しかける。
マハラジャちゃんも、チロチロ舌を出して答えた。