第17章 幸せをありがとう

「それじゃあなぁーっ!!
お前ら全員、幸せになれよ――――――っ!!」
竜太郎の背の上で手を大きく振り、チョルくんは最高の笑顔で一同に手を振った。
その後すぐに竜太郎は、翼をはためかせ城の外に飛んで行ってしまった。
『ええ子だのー』
「…ああ。本当に、いい子だった」
ヘルデウスは、玲音に微笑む。
「竜太郎って、よほど気に入った人しか自分から背中に乗せないのよ?
人間なんてごはんか遊び道具、としか思ってないような子なのに…。
やっぱチョルくんて、タダ者じゃないかも……」
「アニーお姉様~、そんなの今さらだって~」
ベルゼバブがケラケラ笑う。
「人間をごはんか遊び道具にさせてたんだね……」
やっぱりこの人悪魔だ、とエステレラは痛感した。
『皆さん、本当にごめんなさいね。
突然、重い判断を降してしまって……』
「いいんですよ、女神様!
これで皆、超幸せになれるんですから?」
シアンが、口に弧を描き自らの胸を叩く。
「そうだぜ!余生を穏やかに楽しんでやるぜ穏やかに」
「なにそれじじくさ~~。
言い方どうにかしたまえ」
ルシファーにクスクスと笑われ、ホトはかぁっと赤面した。
「人を老後扱いすんな老後扱い!この悪魔!」
「悪魔だもん」
ルシファーはしれっと返答する。
「それに、君、2000年前この美しい私を妖怪呼ばわりしたじゃないか。
ちょっと今借りを返さないと、いつ出来るかわからないのでね」
「はあ?いつまで根に持ってんだいつまで……。
…つか、そんな昔話されたって、記憶にねえし……」
ホトは呆れて溜め息をついた。
「えー!ファルが妖怪なら、ヘルデウス様はどうなるの!?怪獣!?」
「そんなくたびれた怪獣いるわけないっす」
「そうそう。どちらかと言えば……
ダメ。これ以上は言えないわ」
「私は何も聞いていないとも。
何も聞かなかったさ」
「……………」
自分の目の前でとんでもない会話を繰り広げる四天王を、ヘルデウスはくたびれた顔で見ている。
『昔と変わりませんね』
「ほんとほんと」
そしてマナの女神とエステレラが、それを笑って眺めていた。
「あははは!ヘルデウスって、昔からこんな扱いされてたんだ?
超カワイイ~~~ッ」
「人の不幸を笑い種にするな、初代方角師!」
シアンに爆笑され、ヘルデウスは思わず真面目にツッコむ。
その場は、たくさんの笑い声で溢れた。

やがてマナの者は、天上界へと帰った。
悪魔達は、転生のその時まで、思い出に溢れた地獄の城で過ごす事になったという。
もちろん、玲音と一緒に。
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