第17章 幸せをありがとう

『うーん…俺はどうすっかのぉ~。
終わりまで見れた事だし、もう素直に成仏すっかのお』
「まだ終わりじゃないっす。
おいら達と一緒にチョルの人生を見届け切ってからが、終わりっす」
ベルフェーゴルは、口元に弧を描き玲音に言う。
まだまだ、この世界が生まれ変わるまで親友と共にいたいと。
玲音も、笑顔になりそれに応える。
『おうっ!終わりまで一緒にいでやる!!
てな訳で、皆さんもよろしぐの?過去が視えるんならわがるよの?』
「しょうがないわねえ……。
フェルが底抜けに信頼してるくらいなんだし、いっか。
竜太郎と一緒に世話してあげるわ。ちゃんと言うこときくのよ」
「玲音くんよろしくねー!!あたいベルベル!!
チョルくん以外にも、悪魔を差別しない人間っていたんだ!!」
「また玲音君と暮らせるんだね。明日も明後日も楽しみだな。
ヘルデウス様も女神もエステレラも、よろしくお願いしますね?彼、良い人ですから」
『もちろんです。ベルフェーゴルの友は、私の友です』
「へえ~っ。カッコいい幽霊だなぁ」
「なかなか良さそうな青年ではないか」
『へへへ…恥ずかしちゃあ』
3人に褒められ、玲音は照れ臭そうに後頭部をかく。
「うーん…いつか死ぬのは皆いっしょなんだし、天から友達を見守る余生も悪くないわね!!
チョルくん、しっかり頑張んなさいよっ?」
「おうよっ!しっかり見ときんしゃいよ?俺の生きざま!」
みほとチョルくんがハイタッチをかわす。
みほはすでに、開き直ったようだ。
彼女の前向きさに、チョルくんは背中を押される。
そして、くるっとエディの方に向き直った。
「俺がいなくなって、後悔すんなよ?
お前みてーなブサメン、忘れようたって忘れられんしどげんしてくれると?
寝覚めの悪うなったら責任とっちくれるんやろな~」
チョルくんは意地悪く笑いかける。
「後悔しませんよーだ。
わいかて、チョルくんみたいなイケメン忘れたくても忘れられへんわ。
残念ながら責任は取れまへんので悪しからず」
エディも、特上のスマイルと悪態で返した。
彼と突っつき合えるのも、おそらくコレが最後だろう。
「チョルくん、元気でね!!
ボク達忘れないから!!」
「チョルくんなら大丈夫なのである」
「達者でやれよ達者で!」
「楽しかったぞよ」
「チョルくんのこと、私達最後まで想ってるよ!」
「地上で楽しく暮らして下さいましね」
「テチョルさんのこと、わたしもみんなもずっと見てます」
「さようならは言わん。
達者で暮らせ、テチョル」
「チョルくんと過ごせて超良かったよ!!」
「じゃあね、チョルくん。
僕、何があっても忘れません。チョルくんがいた事を」
「バイバイ、チョルくん!」
「がんばれよな!!応援してるぜ!!」
口々に笑顔で言葉をかけるマナ一族達。
そして、
「チョルくん‥‥」
これまでで最も愛情に満ちた微笑のイルカ。
永久(とこしえ)の別れの時が訪れた。
でも…良い。光の中へ行くたった一人の弟を見送りたい。
切なく輝くあなたを……。
「幸せを、ありがとう」
温かさに包まれた、穏やかで優しく胸の締め付けられる…だが、幸福な最後の言葉。
チョルくんは、何も言わず雫に潤んだ目を細め姉に微笑み返した。
自分の全てだった姉への、精一杯の感謝と愛情をこめて。
『キュウー!!』
「…?お前が送ってくれると?」
竜太郎は、返事代わりにチョルくんの体をそっと掴み、自らの背に乗せる。
「あははっ、コマウォヨ!
お前最高の友達だし!」
チョルくんは母語で天真爛漫に礼を言いながら、竜太郎の体に抱き付いた。
「アスデモス、お前のペットちょっと借りるし!」
「仕方ないわねぇ…今日は特別よ?」
アスデモスはやれやれと肩を竦めた。
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