第17章 幸せをありがとう

「行くに決まってるわ。
あれは絶対……、魔力と魔力がぶつかった音だもの」
みほが毅然と言った。
「もしかしたら…、女神様が戦ってるのかも……。
そしたら、エステレラもいる…。けれど………」
ミンウが下を向いて呟く。
「大丈夫かな……」
「大丈夫に決まってんだろ!
なんたって、オレらのボスなんだぜ?」
そんなミンウの肩を、タオがポンと叩いた。
ニカッといういつもの笑顔だ。
「なっ、ミンユー?男ならドーンと行こうぜ?」
「…はい!」
彼の言葉に励まされたのか、ミンウはしゃきっと胸を張った。
「ミンウかっこえー^^*」
「そんなぁ、エディさんのほうが…(//∇//ι)ヾ」
「何じゃあいつらは。こげなとこまで来てほのぼのコントやるとか珍しか人やね」
「“〇〇ちゃんって可愛いよね~”“え~〇〇ちゃんのほうが可愛いよ~”という類いのがーるずとーくのようです…」
「バカ子孫どもが……」
チョルくんが呆れ顔をし、マナが呟き、マオが溜め息をついた。
「いー加減にするのである、ドアホども!!さっさと城行くのである城!!
ここは戦場の地ぞ!!
撃たれたいのか貴様ら!!」
「「すいません…」」
イリスェントに軍隊の迫力でビシッと叱られ、エディとミンウは縮こまる。
「まあ怖い」
ウフフと笑むと(怖いもの知らず)、イルカはチョルくんの手を握った。
「参りましょ、お城へ。案内してくれますわね?」
共に暮らしていたあの頃と変わらない、母性愛を感じられる優しい微笑み。
チョルくんはそんな姉が大好きだと感じた。
こんな時に不謹慎なのは、わかってはいるけれど。
「…はい、ヌナ!」

そして、城内。
四天王と玲音、エステレラが見守るなか、マナの女神とヘルデウスが対峙していた。
きちんと整えられていたであろう室内は戦場と化した影響で荒れ、魔力により破壊された跡がところどころ色濃く残っている。
ヘルデウスもマナの女神も、激しい戦闘を繰り広げていたのだろう。
だが彼らは、全くの無傷と言える状態だ。
自分達とはまるで桁が違う戦闘力に、四天王は本気のヘルデウスや女神の強さに息を飲んだ。
「………」
「………」
互いに光と闇の魔力を纏い、にらみ合う二人。
まさに一触即発の冷戦状態だ。
『ヘルデウス……貴方、力を出し切っていませんね』
「………」
『貴方は、10分の9の…ギリギリの力しか解放していない!!』
マナの女神には、わかるのだ。
ヘルデウスが、かつての恋人を殺すのを躊躇い、本当の全力を出しきれていない事が。
ギリギリの、本当にギリギリの所で抑えている。
しかし、それは……。
「それは、君とて同じだろう!!
私を相手に、ほんの僅かに力を抑えている!!」
ヘルデウスは叫んだ。
肩を震わせ、悲痛に。
「あの日、決断を下したのは君だろう!!
本気で私を殺しに来い!!そうすれば、私もきっと全力を出してみせる…!!
このような私達だから……このような私達だから、何千年も戦争が長引いたのだ!!!
私達がさっさと決着をつけておれば、とうの昔に終わっておったのだ!!!!
違うか!?女神……エイレンテューナ!!」
その時。
「「「「「女神様ーッ!!エステレラーッ!!」」」」」
チョルくんとマナ一族が。
『皆さん……!テチョル!!』
「みんな…!!」
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