第16章 幾つもの日々を越えて
「ほう。すごい事とは?」
「今、天上界に結界張られて、困っちゃいますよねー。
ですからあたい、考えたんです!!
天から攻められないなら、地から攻めればいいの!!
人間相手なら、あたいのハエ騎士団でも楽勝でしょ!?
おまけにマナ一族は人間を庇うから、まとめて戦えちゃう感じなの!
どう!?いけちゃいませんかっこの作戦?」
ベルゼバブは、パチリと愛らしくウインクをする。
台詞の物々しささえなければ、誰が見ても可愛らしい女性であろう。
ヘルデウスは、彼女の立案に大いに乗った。
「それは良いな。いずれ、地上は我が物になる。
邪魔な人間どもを排除すべきなのだ…。
いつ頃から実行するか等詳しくは、後々会議で決めよう。
良い提案をしてくれた褒美に、好きなだけ菓子をキッチンに買い溜めるのを許そう」
「やったーあ!あたい偉ぁーい!!」
ベルゼバブは、満面の笑顔でバンザイをする。
「腕がなるな~♪腕がなるな~~♪」
「いい年こいておやつでテンション上げんなベルゼデブ」
「ひどい!!ベルゼバブだもん!!」
悪態をつきながらも、チョルくんの心はドクドクと悲鳴をあげていた。
心の準備はしていたつもりだが、いざその時が来るとなると、息苦しさを感じる。
内心いたたまれなくなり退室し、廊下の壁際でチョルくんは胸を押さえながら壁に凭れズルズルと床に座り込んだ。
気づかないうちに、目からは涙が流れ頬を伝っていた。
この苦しさに、チョルくんは感じた。
安心感を。
――嗚呼。
――まだ俺は、“人間”だ………。
この冷たい世界と戦争に心を蝕まれ悪魔となったのであれば、それはもう人間ではない。
平気で殺戮を繰り返す本当の“悪魔”だ。
流れ落ちる涙は止まらない。
自分は悲しいのか、それとも嬉しくて泣いているのか。
…人間が地獄に住むというのは、本当に難儀である。
「来た、か……。ついに……」
チョルくんは、よろよろと立ち上がる。
そして、毅然とした表情で涙を拭った。
「俺も、俺の出来る事ばやりきらんといかんし。
皆みたいに…」
開いた窓から吹く風の冷たさが、現実への意識を高める。
「―――まずは、皆へのお知らせだし!!」
チョルくんは、寒さを振り切り長い廊下を駆け出した。
「ベルフェーゴル!!」
バン!!と勢いよく扉を開くも、彼の私室であるはずのその部屋には、彼の姿は見当たらない。
(あっちゃー。居らんかったか……)
『フェルだば(なら)、仕事さ行ってっども?』
「!!!!!」
不意打ちに背後から現れた幽霊男に、チョルくんは大いにびっくりしぞわぞわとした寒気に身震いする。
それを見て幽霊男もとい玲音は、ばつの悪そうな顔をした。
『そんげ怖がらねで。俺が悪りっけ』
「あっ、あああ足っ、足がなかっ!!!」
『まぁおばけださげの』
「あああああ悪霊退散!!悪霊退散ッ!!!」
『悪霊でなの(でなんか)ねぇで?あんまりだのぉ~っ』
玲音はケラケラと愉快そうに笑った。
『で、何の用?
フェルに用だったら、俺友達だから伝えっぞ?』
「あ、そう……。じゃ、頼むし…」
自分を落ち着かせようと、チョルくんは2、3回深呼吸する。
「サタンは、人間とマナ一族の排除を本格的に開始するらしか…。詳しい事は、会議で決めるんだとよ。
そう、伝えてほしか」
『ふーん。了解』
「今、天上界に結界張られて、困っちゃいますよねー。
ですからあたい、考えたんです!!
天から攻められないなら、地から攻めればいいの!!
人間相手なら、あたいのハエ騎士団でも楽勝でしょ!?
おまけにマナ一族は人間を庇うから、まとめて戦えちゃう感じなの!
どう!?いけちゃいませんかっこの作戦?」
ベルゼバブは、パチリと愛らしくウインクをする。
台詞の物々しささえなければ、誰が見ても可愛らしい女性であろう。
ヘルデウスは、彼女の立案に大いに乗った。
「それは良いな。いずれ、地上は我が物になる。
邪魔な人間どもを排除すべきなのだ…。
いつ頃から実行するか等詳しくは、後々会議で決めよう。
良い提案をしてくれた褒美に、好きなだけ菓子をキッチンに買い溜めるのを許そう」
「やったーあ!あたい偉ぁーい!!」
ベルゼバブは、満面の笑顔でバンザイをする。
「腕がなるな~♪腕がなるな~~♪」
「いい年こいておやつでテンション上げんなベルゼデブ」
「ひどい!!ベルゼバブだもん!!」
悪態をつきながらも、チョルくんの心はドクドクと悲鳴をあげていた。
心の準備はしていたつもりだが、いざその時が来るとなると、息苦しさを感じる。
内心いたたまれなくなり退室し、廊下の壁際でチョルくんは胸を押さえながら壁に凭れズルズルと床に座り込んだ。
気づかないうちに、目からは涙が流れ頬を伝っていた。
この苦しさに、チョルくんは感じた。
安心感を。
――嗚呼。
――まだ俺は、“人間”だ………。
この冷たい世界と戦争に心を蝕まれ悪魔となったのであれば、それはもう人間ではない。
平気で殺戮を繰り返す本当の“悪魔”だ。
流れ落ちる涙は止まらない。
自分は悲しいのか、それとも嬉しくて泣いているのか。
…人間が地獄に住むというのは、本当に難儀である。
「来た、か……。ついに……」
チョルくんは、よろよろと立ち上がる。
そして、毅然とした表情で涙を拭った。
「俺も、俺の出来る事ばやりきらんといかんし。
皆みたいに…」
開いた窓から吹く風の冷たさが、現実への意識を高める。
「―――まずは、皆へのお知らせだし!!」
チョルくんは、寒さを振り切り長い廊下を駆け出した。
「ベルフェーゴル!!」
バン!!と勢いよく扉を開くも、彼の私室であるはずのその部屋には、彼の姿は見当たらない。
(あっちゃー。居らんかったか……)
『フェルだば(なら)、仕事さ行ってっども?』
「!!!!!」
不意打ちに背後から現れた幽霊男に、チョルくんは大いにびっくりしぞわぞわとした寒気に身震いする。
それを見て幽霊男もとい玲音は、ばつの悪そうな顔をした。
『そんげ怖がらねで。俺が悪りっけ』
「あっ、あああ足っ、足がなかっ!!!」
『まぁおばけださげの』
「あああああ悪霊退散!!悪霊退散ッ!!!」
『悪霊でなの(でなんか)ねぇで?あんまりだのぉ~っ』
玲音はケラケラと愉快そうに笑った。
『で、何の用?
フェルに用だったら、俺友達だから伝えっぞ?』
「あ、そう……。じゃ、頼むし…」
自分を落ち着かせようと、チョルくんは2、3回深呼吸する。
「サタンは、人間とマナ一族の排除を本格的に開始するらしか…。詳しい事は、会議で決めるんだとよ。
そう、伝えてほしか」
『ふーん。了解』