第16章 幾つもの日々を越えて
「玲音君」
『ん?』
「私達は……。まだ生きていても、いいかな…?」
突然ポツリと放たれたルシファーの言葉の内に、玲音は想像を絶するくらいに閉ざされたモノを感じた。
一体サタンの心は、どれほどまでの闇を抱えているのだろう。
自分がそれを拭い去ってやれるなんて烏滸がましい。
烏滸がましいけれど、
『…あったり前だって?この地獄の誰一人として、欠けちゃならね』
そう言ってやることくらいは、赦されるはず。
『そもそも、この世界おかしいんだよ。
誰かが虐げられたり、小っさい子が戦いを強制されたり。
もっと平等になるべきなんだよね。自由で平等な楽しい世界にさ』
「美しいね。その平等って言葉。
そんな世界、どんなに素敵だろうか」
不確かな希望からルシファーの瞳に、僅かな光が戻る。
「君と話していると、夢を見れるよ」
『あはは、見れ見れ!どんどん見とけ?』
(お、おばけ……!おおお、おばけのおるし……!)
そして、物陰で震える男が約1名。
性格とは裏腹にホラー関係に弱い、クォク・テチョル氏だ。
「あ、あわわわわ‥‥‥」
後退り。また、後退り。
(な、なんも見とらんし……。俺、部屋でデモノロジー勉強するんだし……。
おおおおばけとルルルシファーの野郎が笑いあっとうなんちそんな、非日常的な事あるわけなか……)
「ヌッ‥‥ヌナァーッ!!!!!!!」
絶叫しながら部屋に閉じこもる彼を、何人かの悪魔が目撃したという。
その数週間後。
ヘルデウスの部屋にイライラするヘルデウスと、それを見ているチョルくんがいた。
「なーに難しい顔しとうとや。
ブサメンがさらにブサくなっち見るに耐えんし」
「結界だ!エイレンテューナが天上界に張った結界が融けんのだ!!
アレが邪魔で仕方ない!!」
「ふぅ~ん…。
にしても、おかしかね。俺は入り込めたとに……。
悪魔だけ弾かれるとかな?」
チョルくんは、こてんと首を傾げる。
「でもさー、ヘルデウス。
例え天上界に侵入できたからっち、マナ一族に必ずしも勝てるとは限らないんじゃあなかと?
あっちもこっちもお互いに100%の勝率はありえないことくらい、お前なら絶対わかっとうやろ?」
「ああ……。どうしたものか。
また会議でも開くか」
ヘルデウスは、疲れきった顔で溜め息をついた。
「なんねお前、くたびれとうね~~。さすが金メダル級のくたびれ具合だし。
よっし、いっちょ肩でも叩いちゃるか!」
「あ、ああ。頼む……」
「はいよ~☆」
チョルくんは、ヘルデウスの後ろに回り、彼の逞しい肩を程好い力で叩き始める。
心地好さから、ヘルデウスは徐々に穏やかな表情になってゆく。
「気持ちがいい……」
「おじさんお肩を叩きましょ~♪たんたんとーん♪たんたんとーん♪」
変てこな歌を歌いながら、リズミカルに肩叩きをするチョルくん。
「ヘルデウス様失礼しまーす!
‥うわ、親子がいる!」
入室するなり、ベルゼバブは面白そうな声を上げる。
「こういうの、ヨンス様にもやったことあるし。
親子ってこんな感じなんかな?」
ヨンスとは、イルカの父―――コリア区域の王である。
チョルくんは、同じことを王にもしていたようだ。
彼はとても可愛がられていたのだろう。
「何の用だね?ベルゼバブ」
「聞いて聞いて!ヘルデウス様!!
あたい、すごーいこと思いついちゃったんです!!」
ベルゼバブは、待ってましたとばかりに声を弾ませる。
『ん?』
「私達は……。まだ生きていても、いいかな…?」
突然ポツリと放たれたルシファーの言葉の内に、玲音は想像を絶するくらいに閉ざされたモノを感じた。
一体サタンの心は、どれほどまでの闇を抱えているのだろう。
自分がそれを拭い去ってやれるなんて烏滸がましい。
烏滸がましいけれど、
『…あったり前だって?この地獄の誰一人として、欠けちゃならね』
そう言ってやることくらいは、赦されるはず。
『そもそも、この世界おかしいんだよ。
誰かが虐げられたり、小っさい子が戦いを強制されたり。
もっと平等になるべきなんだよね。自由で平等な楽しい世界にさ』
「美しいね。その平等って言葉。
そんな世界、どんなに素敵だろうか」
不確かな希望からルシファーの瞳に、僅かな光が戻る。
「君と話していると、夢を見れるよ」
『あはは、見れ見れ!どんどん見とけ?』
(お、おばけ……!おおお、おばけのおるし……!)
そして、物陰で震える男が約1名。
性格とは裏腹にホラー関係に弱い、クォク・テチョル氏だ。
「あ、あわわわわ‥‥‥」
後退り。また、後退り。
(な、なんも見とらんし……。俺、部屋でデモノロジー勉強するんだし……。
おおおおばけとルルルシファーの野郎が笑いあっとうなんちそんな、非日常的な事あるわけなか……)
「ヌッ‥‥ヌナァーッ!!!!!!!」
絶叫しながら部屋に閉じこもる彼を、何人かの悪魔が目撃したという。
その数週間後。
ヘルデウスの部屋にイライラするヘルデウスと、それを見ているチョルくんがいた。
「なーに難しい顔しとうとや。
ブサメンがさらにブサくなっち見るに耐えんし」
「結界だ!エイレンテューナが天上界に張った結界が融けんのだ!!
アレが邪魔で仕方ない!!」
「ふぅ~ん…。
にしても、おかしかね。俺は入り込めたとに……。
悪魔だけ弾かれるとかな?」
チョルくんは、こてんと首を傾げる。
「でもさー、ヘルデウス。
例え天上界に侵入できたからっち、マナ一族に必ずしも勝てるとは限らないんじゃあなかと?
あっちもこっちもお互いに100%の勝率はありえないことくらい、お前なら絶対わかっとうやろ?」
「ああ……。どうしたものか。
また会議でも開くか」
ヘルデウスは、疲れきった顔で溜め息をついた。
「なんねお前、くたびれとうね~~。さすが金メダル級のくたびれ具合だし。
よっし、いっちょ肩でも叩いちゃるか!」
「あ、ああ。頼む……」
「はいよ~☆」
チョルくんは、ヘルデウスの後ろに回り、彼の逞しい肩を程好い力で叩き始める。
心地好さから、ヘルデウスは徐々に穏やかな表情になってゆく。
「気持ちがいい……」
「おじさんお肩を叩きましょ~♪たんたんとーん♪たんたんとーん♪」
変てこな歌を歌いながら、リズミカルに肩叩きをするチョルくん。
「ヘルデウス様失礼しまーす!
‥うわ、親子がいる!」
入室するなり、ベルゼバブは面白そうな声を上げる。
「こういうの、ヨンス様にもやったことあるし。
親子ってこんな感じなんかな?」
ヨンスとは、イルカの父―――コリア区域の王である。
チョルくんは、同じことを王にもしていたようだ。
彼はとても可愛がられていたのだろう。
「何の用だね?ベルゼバブ」
「聞いて聞いて!ヘルデウス様!!
あたい、すごーいこと思いついちゃったんです!!」
ベルゼバブは、待ってましたとばかりに声を弾ませる。