第15章 友情の狂詩曲

「アダムさんのお姉ちゃんは、見つかったのでしょうか…?」
「それが、残念ながら…。
悪魔との戦いで、捜す暇がなかったんだ。
アダムはもう、60年経った時点で諦めたみたい」
「そう…ですか…」
コルちゃんは、悲しげに俯いた。
「わたし、ご先祖様達をとても尊敬してます。
チカラになりたいと思ってる。
でも……。皆さんひとりひとりが必ず抱えてる、大きな枷を外して差し上げる事はできなくて…。
わたしは、普段励まして頂いたり遊んで頂いたりしているのに」
「いいんだよ。側にいてくれれば。
それだけで、僕達は大きな頼もしさを感じられるんだから」
仲間がいる。
それは、常に戦いに身を投じる者にとって、どれほどの支えになろうか。
先祖達からすればまだまだ未熟なうちである3代目の5人だが、その存在があるだけで先祖達は救われているのだ。
「…あゆむさん…」
コルちゃんには、もう迷いはなかった。
神殿の仲間達の為に、生きていく。
これからも、戦い続ける。
二度と、後ろは振り向くまい。
「わたし……、マナ一族である事、誇りに思います」

その夜。
ベルフェーゴルは、深夜まで仕事に負われようやく私室へ眠りに向かっていた。
戦争をしていれば、当然武器を大量に使う。
それらを考案し造るのは、彼の役目である。
ハエ騎士団全員分の武具を完成したら、すっかり3時を回っていたのだ。
(眠い………)
若干ふらついた足取りでドアの前まで行き、入室する。
すると、そこには―――‥‥‥。
「―――レオ……っ!?」
体は透けているが、かつての親友がいた。
その姿は、死したあの頃そのままで。
「…レ、オ……。
…ッ……、とっくに殺した人間が、今さら何の用や!?」
ベルフェーゴルは一瞬弱々しい表情になるが、すぐに警戒の表情に変わる。
しかし、玲音は笑顔を見せた。
あの頃と同じ、太陽のような温かい笑顔だ。
『おめえ、元ヤンでも俺は俺だって言ってくれたよの?
おんなじ言葉を返してやる。
悪魔でも、フェルはフェルや!
おめの好きにすっどええ!
世界も、おめの人生もな。
何か危なくなったら、俺が助けでやる』
「……レ‥オ……」
ベルフェーゴルは、その場に崩れボロボロと涙と嗚咽をこぼし始めた。
これまで1000年間抑えていた親友への想いが、堰を切ったように溢れ出る。
「ごめんの……!ごめんの……っ」
『これからもずっと友達だぞ?フェル』
玲音は、透けた手でベルフェーゴルの黒髪を撫でた。
大切そうに、大切そうに。
(嗚呼……もう、人間も悪魔も関係ないのなら……)
「…また。信じれるっす…」
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