第15章 友情の狂詩曲
「しぇばっ(では)!レッツゴ~~!!」
「…………」
ベルフェーゴルを連れ家に帰ると玲音は、ガチャガチャと鍋やら食器やらを戸棚から漁り始めた。
ベルフェーゴルは、彼が空腹になったのだろう、それだけだと思っていた。
しかし。
「フェル、腹減ったろ?
俺料理作ってやっぞ!」
「え?そんな。別にいいっす…」
「えぇさげ、えぇさげ。フェルさ食って貰いたいんだよ。
俺の自慢の芋煮」
「‥?いもに………?」
「里芋どご(を)ミソやみりんで煮て、さらに糸こんにゃくとか肉とかニンジンとか入れんだ!!
うっめあんぞ~っ?♪
きっと気に入るからさ、まず一口食ってみてくれよ?」
鼻歌を歌いながら、そのまま玲音は料理を始める。
その後ろ姿に、ベルフェーゴルはしばらく何か考えていたが、自分も隣に立った。
「おいらも手伝うっす」
「ほんとえ?もっけだのぉ~!
しぇば、野菜どご洗ってくれっかの?」
「いま、なんて……?」
「ありがとうって言ったあんよ」
にっこり微笑む玲音の笑顔に、ベルフェーゴルは感じた。
自分の中にある疑心暗鬼や猜疑心といった負の感情が、完全に浄化されゆくのを。
心が読めるサタンである事も、こんな時ばかりは悪くない。そう思った。
なぜなら玲音の心は、下心や裏など全くなく、あるのは嬉しくなる親切心だけなのだから。
「…や、野菜洗うの?」
「アハハッ、移ってっぞ?
うんうん、これでおめも立派な田舎もんだ」
「レオみたいなのがそばにいれば、当たり前っす」
「言ったのぉ~っ!?ナマハゲさ差し出すぞ!?」
憎まれ口を叩きながらも、ベルフェーゴルの表情はリラックスしていた。
また、玲音も心から会話を楽しんでいた。
その日食べた芋煮は、とても美味しかった。
ベルフェーゴルと玲音が出会って、数日経った頃。
「のう、フェル。フェルは昼間ビジネスでどっか出はってっけど、そんげ歩き回って何しったな(何してるの)?」
「え……。‥えと、調査っす」
まさかマナ一族の偵察とは言えない。
ベルフェーゴルは、咄嗟に言い回しを変え取り繕う。
「ふーん。何のや?」
「レオ。しつこい男は嫌わいっぞ」
「おめえは女か!!」
玲音のごもっともなツッコミが入る。
「――ま、えっか。言いでぐねーもんはしゃーない。
ところでその仕事ってさ。儲かんの?俺は一介の教師だども」
「まあ、生活出来るくらいには………。
でも、この調査は一銭の金にもならないっす」
「何やそれぇ~っ!?せめて、700円の時給は出すべきだで!?
なんちゅー上司や、どーせスタイル悪いオッチャンだあんろ!?」
「んだんだ。言ってやれ」
~~~~~~~~~~~
「ふえっくしっ!!!!!!」
「ヘルデウス様、くしゃみうるさーい」
「典型的なオヤジだねえ。
私はああはなるまい」
~~~~~~~~~~~
――――――バサッ。
「ん?」
本棚から本が落ちたことに気付き、玲音はそれを直しにいく。
「あいや~。聖書落ちちまった。
家族がちゃんとしておかなかったんだの」
それを拾うと玲音は偶然開いたページを見て、顔をしかめる。
「うげ~、悪魔の挿し絵……おっかねあんけど~。
なになに、“ベルフェーゴル”?」
(……………)
「こんなのと戦わねばねあんて……。マナ一族ってのはご苦労だのぉ~。
…ま、どっちも本当にいるのかわがんねけど」
「……………」
「……?なした?フェル。
顔色が………」
本棚に聖書を戻し、玲音はベルフェーゴルのもとに歩み寄る。
「…………」
ベルフェーゴルを連れ家に帰ると玲音は、ガチャガチャと鍋やら食器やらを戸棚から漁り始めた。
ベルフェーゴルは、彼が空腹になったのだろう、それだけだと思っていた。
しかし。
「フェル、腹減ったろ?
俺料理作ってやっぞ!」
「え?そんな。別にいいっす…」
「えぇさげ、えぇさげ。フェルさ食って貰いたいんだよ。
俺の自慢の芋煮」
「‥?いもに………?」
「里芋どご(を)ミソやみりんで煮て、さらに糸こんにゃくとか肉とかニンジンとか入れんだ!!
うっめあんぞ~っ?♪
きっと気に入るからさ、まず一口食ってみてくれよ?」
鼻歌を歌いながら、そのまま玲音は料理を始める。
その後ろ姿に、ベルフェーゴルはしばらく何か考えていたが、自分も隣に立った。
「おいらも手伝うっす」
「ほんとえ?もっけだのぉ~!
しぇば、野菜どご洗ってくれっかの?」
「いま、なんて……?」
「ありがとうって言ったあんよ」
にっこり微笑む玲音の笑顔に、ベルフェーゴルは感じた。
自分の中にある疑心暗鬼や猜疑心といった負の感情が、完全に浄化されゆくのを。
心が読めるサタンである事も、こんな時ばかりは悪くない。そう思った。
なぜなら玲音の心は、下心や裏など全くなく、あるのは嬉しくなる親切心だけなのだから。
「…や、野菜洗うの?」
「アハハッ、移ってっぞ?
うんうん、これでおめも立派な田舎もんだ」
「レオみたいなのがそばにいれば、当たり前っす」
「言ったのぉ~っ!?ナマハゲさ差し出すぞ!?」
憎まれ口を叩きながらも、ベルフェーゴルの表情はリラックスしていた。
また、玲音も心から会話を楽しんでいた。
その日食べた芋煮は、とても美味しかった。
ベルフェーゴルと玲音が出会って、数日経った頃。
「のう、フェル。フェルは昼間ビジネスでどっか出はってっけど、そんげ歩き回って何しったな(何してるの)?」
「え……。‥えと、調査っす」
まさかマナ一族の偵察とは言えない。
ベルフェーゴルは、咄嗟に言い回しを変え取り繕う。
「ふーん。何のや?」
「レオ。しつこい男は嫌わいっぞ」
「おめえは女か!!」
玲音のごもっともなツッコミが入る。
「――ま、えっか。言いでぐねーもんはしゃーない。
ところでその仕事ってさ。儲かんの?俺は一介の教師だども」
「まあ、生活出来るくらいには………。
でも、この調査は一銭の金にもならないっす」
「何やそれぇ~っ!?せめて、700円の時給は出すべきだで!?
なんちゅー上司や、どーせスタイル悪いオッチャンだあんろ!?」
「んだんだ。言ってやれ」
~~~~~~~~~~~
「ふえっくしっ!!!!!!」
「ヘルデウス様、くしゃみうるさーい」
「典型的なオヤジだねえ。
私はああはなるまい」
~~~~~~~~~~~
――――――バサッ。
「ん?」
本棚から本が落ちたことに気付き、玲音はそれを直しにいく。
「あいや~。聖書落ちちまった。
家族がちゃんとしておかなかったんだの」
それを拾うと玲音は偶然開いたページを見て、顔をしかめる。
「うげ~、悪魔の挿し絵……おっかねあんけど~。
なになに、“ベルフェーゴル”?」
(……………)
「こんなのと戦わねばねあんて……。マナ一族ってのはご苦労だのぉ~。
…ま、どっちも本当にいるのかわがんねけど」
「……………」
「……?なした?フェル。
顔色が………」
本棚に聖書を戻し、玲音はベルフェーゴルのもとに歩み寄る。