第15章 友情の狂詩曲

「あなた、倭区域の出身…じゃあ、ないよね?
まだちっちゃいのに、外国語上手いんだね」
「うん、ユーエスエイ区域生まれだよ!!
ボク自身よくわかんないんだけど、なぜか無意識に今お話できてるんだ…どうしてかなあ?習ったことないのに」
うーん、と男の子は不思議そうに小首を傾げる。
彼の言葉で、3人は確信した。
この小さな男の子は、“学者”であることを。
「あっ、ボク、アダムっていうの。
お兄ちゃんたちはなんていうんだい?」
「僕?あゆむだよ」
「…タオ」
「チェンだよ。よろしくね。
ところでアダムは、どうしてこんな区域外れにひとりでいるの?
お父さんとお母さんは?」
チェンの質問に、アダムは顔を曇らせた。
そして、俯き話した。
「ダディーとマミーは……。戦争で撃たれて、動かなくなっちゃった。
ボクがグズグズしてたから、かばって攻撃されて…。
声かけても知らんぷりするし冷たくて重いから、そこに置いてきた。
…あんなことしたら、一緒に逃げれないのに」
アダムの声が、だんだん震えてゆく。
ぐっと下唇を噛み、小さな肩を震わせ涙を堪えている。
きっとこの幼い少年は、両親の死を理解しているのだろう。
しかし、頭ではわかっていても心の奥では認める事ができずにいる。
そんな事が3人に伝わった。
「…ごめんね。ツラい事、思い出させて」
チェンは、心苦しそうに謝罪した。
「んーん。いいんだ。
ボク、これから拐われたお姉ちゃんをまた探しに行くんだ。
お姉ちゃんが見つかれば、ボク平気さ!」
「そっか…。お姉さんて、どこにいるかメドはたってるの?」
「えっ……。…わかんない…」
「ダメじゃん。これじゃ、また腹すかせて倒れるのがオチだろ。
それよりだったら、もっと有意義なことすりゃいーだろめんどくせぇ」
「What?!どういう意味だい?」
タオの台詞が引っ掛かり、アダムはむっと眉を寄せる。
「お前、マナ一族なんだよ。“学者”なわけ。
オレらは仲間を探してんだから、んな途方もないことしてるよかだったら、とっととこっちついてきてもらったほうがありがてぇんだよ。
意味わかったかクソガキ」
はぁーっ、とタオは面倒臭そうなため息を盛大についた。
アダムは、理解したのか「ああ~~っ!」と手をうつ。
「だからボク、キミ達と無意識に話せてるんだ!!
そっかあ!だからかあ~!!」
「来るの?来ねーの?」
「……」
「…僕達と旅しながらでも、お姉さんは見つけられるよ?」
しゃがみアダムの目線に合わせると、あゆむはそっと彼に言った。
「この旅路で見つけられるかも、仮に見つかったとして一緒に暮らす事が叶うかどうかもわからない。
けれど僕らは、君の事が必要だし一緒にいたいんだ」
「…。ボクは、誰に何をさせられるの?
どこに行ってどんな生活を送るようになるの?」
ふたつの宝石のようなシルバーアイズが、あゆむを不安げに見つめる。
「そんなのオレ達だってわかんねーよ!
悔しいけどなんにも知らねーよ、何もかも!!
あーだこーだ言わないで男なら潔く向き合いやがれ、このヘタレが!」
「シャラップ!キミに言われなくとも向き合ってやるさ!
キミキーキーうるさいよこのMonkey!!」
「だれがモンキーだハムスター!!滑車でも無意味にグルグル回ってやがれ!!」
「なにそれ可愛い!!」
(は……ハムスター……)
(タオ、悪口が浮かばなかったんだ……)
あゆむとチェンは必死に笑いを堪える。
「ほ、ほら二人とも、ププッ…ケン、カ、しないで」
「チェン、顔ヘン」
タオがじとっと彼女を見やる。
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