第15章 友情の狂詩曲

「さて、他のマナの子を探そっか!
でも、一体どこにいるのかな?」
てくてくと森の中を歩きながら、チェンが言う。
彼女は、考えるよりまず口にするタイプのようだ。
「いろんな区域行ってみようよ!
ああでも、見分けかたがなぁ~……。
私、あゆむがウォークマスターだって全然気付かなかったもん」
「あはは。僕も、二人がマナ一族だと全然気付かなかったよ…。
確かめようがないもんね?
ところで、二人の得意な事ってなに?」
「私?料理だよ!中華ならなんでもお任せ♪
タオは格闘技めっちゃ強いよね?」
「"格闘家"なんだから当たり前だろ…」
素っ気ないが、タオの仏頂面にはやや赤みが差している。
「オレの事はどうでもいいよ。
それより、人にモノを訊ねんなら自分から先に明かすもんだろ。
それが礼儀ってもんだ」
「そうだね、ごめんごめん……僕は、野菜や果物を栽培するのが得意かな。
農薬をなるべく使わずに、新鮮な野菜を育てる事がポリシー!それが大地農業!」
・・・・・・・・・・・・・・・。
「あははははははは!!
じっ地味ぃ~っ!!」
ツボにハマったらしいチェンが、腹を抱えて笑い転げ出した。
「なっ、何さ!農薬スプラッシュをかますよ!?」
「…意味わかんねぇ…」
※農薬スプラッシュ……農薬を顔面に勢いよく吹き付ける、農家の申し子大地あゆむさん(12)の必殺技。
その効果は地味によく効く。
「……?」
「どうしたの?タオ」
チェンが訊ねると、タオは黙って西の木陰を指した。
そこには、幹にもたれ掛かりぐったりとしている小さな白人の男の子がいた。
艶のある銀髪に思わず目を惹かれる。
「あの子は……?なんだってこんな区域の外に?」
「助けよう!」
3人は、男の子に駆け寄った。
(えっと……。見るからに、他区域の子だよね?
どうしよう。僕イングリッシュわかんない…。)
「え、ええーっと……。
ボク、どうしたの?
……通じるかな…」
「…………I'm…hungry…….」
男の子が病的な弱々しい声で口を開く。
「は、ハングリー……?おなかすいてるの……?」
「3日間も、なんにも食べてないの‥‥」
倭区域の言葉話せるんじゃん。
3人は内心、ツッコんだ。
「気持ち悪いよー…しんじゃうよー…」
「だっ、大丈夫?これ、良かったら食べなよ」
あゆむが、リュックからふかふかしたパンをひとつ取りだし男の子に差し出す。
すると男の子は、よほど空腹だったのか大急ぎでパンにかじりついた。
「落ち着けよ……」
「あはは、そんなに慌てなくてもまだたくさんあるから大丈夫だよ?
ゆっくり食べて」
あゆむは、美味しそうにパンにありつく男の子の頭をニコニコと撫でる。
しばらくすると、男の子は口のまわりに食べかすを付けて満面の笑みを浮かべた。
回復しました!とばかりに笑顔が輝いている。
「お兄ちゃん、Thank you!!えーとね…ゴチソウサマデシタ!!」
「いえいえ、どういたしまして」
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