第15章 友情の狂詩曲
感情を剥き出しにし怒鳴りながら、少年が現れた。
彼もまた、美花区域の格好をしている。
どうやら、彼女の知人である事には間違いない。
何を言っているかは、外国語に疎いあゆむにはわからないが、おそらく美花区域の言語という事だけは言葉の持つ雰囲気で聞き取れた。
「えっと……。君は……?」
「てめぇの知った事かよ。早く自分の区域に帰りやがれ。
終戦したからって調子こいてっと、その辺のモンスターに喰われて命を落とすぞ」
少年は、ぎろりとあゆむを睨み付け、刺々しく言葉を紡いだ。
あゆむは感じた。
彼らが、自分を警戒している事を。
そして、警戒しながらも案じてくれている事も。
「…僕は平気だよ。ウォークマスターだからね」
「はあっ!?お前、マナの…ッ?!なんでそう易々と他人に自分がマナ一族だって名乗れんだよ!?
いてぇ目にあった事ねえのか!?」
「え?あ、うん…」
少年があまりに大きな反応を示すもので、あゆむは思わず怯んでしまう。
「タオ、落ち着いて。まずはこの人のお話を聞いてみようよ」
少女が、どうどう、と少年を宥める。
オレは馬か!と少年がツッコミを入れた。
「これまでいろんなとこ転々としてきたけど、仲間なんて初めて見るよ…。
私達もマナ一族なの。
方角師のチェンだよ。よろしくね」
「…………」
少女――チェンは自己紹介するが、少年、タオは今だ警戒心が解けていないのか仏頂面で黙っている。
「こっちはタオ。格闘家だよ」
そんな彼の代わりに、チェンが彼を紹介した。
「…。そっか。よろしくね。
僕は大地あゆむ。
僕は、覚醒したばかりなんだけど……倭区域の伝来ハカセて子に、仲間を探してくるよう言われててね。
今日旅に出たんだよ」
「…うさんくせぇな……誰だよ、デンライハカセて」
「よくわからないけど、昔から"マナ"の研究をしている人で……。
ひとりで倭区域に住んでるみたいなんだ。
きっと、僕らを導いてくれるよ。そんな気がする」
ふーん、とタオは呟くように返した。
「良かったら、二人とも……僕の旅に付き合ってくれないかな?
ウォークマスターとして使命を果たしたいんだ」
「もちろんいいよ!
行くとこもないし、もしかしたらいい未来に繋がるかもしれない……。
ねぇ、タオ?」
「……………」
「…えと、タオ。
僕と旅するの、イヤ……。かな?」
ずっと刺のある雰囲気のタオに、あゆむは気まずさを感じながら苦笑いで訊ねる。
「…人なんて、信じれたもんじゃない。
信用したところで痛い目にあうだけだ。
……だが、仲間だと言うからには……、
…………。
――ただし、条件がある!!
オレ達とつるむのなら、オレ達を裏切るな!
絶対に!!!」
言い放ったタオの眼は、たくさんの感情が渦巻いていた。
不安や苛立ち、戸惑い、混ざりあうマイナスの色。
「……。うん。わかった。
誓うよ」
自分と大して違わない少年の瞳がどうしてそんな暗い光を放つのかはわからないが、あゆむは素直にそれらを受け止めた。
態度は疑心暗鬼の一言だが、きっと人を想う心も持っているに違いない。
そうでなければ、チェンと一緒になどいないはず。
あゆむは、そう頭で整理した。
(…やっぱり、仲間を悪く思いたくないもんね。
後から、いろいろな面が見れるかも知れないし)
彼もまた、美花区域の格好をしている。
どうやら、彼女の知人である事には間違いない。
何を言っているかは、外国語に疎いあゆむにはわからないが、おそらく美花区域の言語という事だけは言葉の持つ雰囲気で聞き取れた。
「えっと……。君は……?」
「てめぇの知った事かよ。早く自分の区域に帰りやがれ。
終戦したからって調子こいてっと、その辺のモンスターに喰われて命を落とすぞ」
少年は、ぎろりとあゆむを睨み付け、刺々しく言葉を紡いだ。
あゆむは感じた。
彼らが、自分を警戒している事を。
そして、警戒しながらも案じてくれている事も。
「…僕は平気だよ。ウォークマスターだからね」
「はあっ!?お前、マナの…ッ?!なんでそう易々と他人に自分がマナ一族だって名乗れんだよ!?
いてぇ目にあった事ねえのか!?」
「え?あ、うん…」
少年があまりに大きな反応を示すもので、あゆむは思わず怯んでしまう。
「タオ、落ち着いて。まずはこの人のお話を聞いてみようよ」
少女が、どうどう、と少年を宥める。
オレは馬か!と少年がツッコミを入れた。
「これまでいろんなとこ転々としてきたけど、仲間なんて初めて見るよ…。
私達もマナ一族なの。
方角師のチェンだよ。よろしくね」
「…………」
少女――チェンは自己紹介するが、少年、タオは今だ警戒心が解けていないのか仏頂面で黙っている。
「こっちはタオ。格闘家だよ」
そんな彼の代わりに、チェンが彼を紹介した。
「…。そっか。よろしくね。
僕は大地あゆむ。
僕は、覚醒したばかりなんだけど……倭区域の伝来ハカセて子に、仲間を探してくるよう言われててね。
今日旅に出たんだよ」
「…うさんくせぇな……誰だよ、デンライハカセて」
「よくわからないけど、昔から"マナ"の研究をしている人で……。
ひとりで倭区域に住んでるみたいなんだ。
きっと、僕らを導いてくれるよ。そんな気がする」
ふーん、とタオは呟くように返した。
「良かったら、二人とも……僕の旅に付き合ってくれないかな?
ウォークマスターとして使命を果たしたいんだ」
「もちろんいいよ!
行くとこもないし、もしかしたらいい未来に繋がるかもしれない……。
ねぇ、タオ?」
「……………」
「…えと、タオ。
僕と旅するの、イヤ……。かな?」
ずっと刺のある雰囲気のタオに、あゆむは気まずさを感じながら苦笑いで訊ねる。
「…人なんて、信じれたもんじゃない。
信用したところで痛い目にあうだけだ。
……だが、仲間だと言うからには……、
…………。
――ただし、条件がある!!
オレ達とつるむのなら、オレ達を裏切るな!
絶対に!!!」
言い放ったタオの眼は、たくさんの感情が渦巻いていた。
不安や苛立ち、戸惑い、混ざりあうマイナスの色。
「……。うん。わかった。
誓うよ」
自分と大して違わない少年の瞳がどうしてそんな暗い光を放つのかはわからないが、あゆむは素直にそれらを受け止めた。
態度は疑心暗鬼の一言だが、きっと人を想う心も持っているに違いない。
そうでなければ、チェンと一緒になどいないはず。
あゆむは、そう頭で整理した。
(…やっぱり、仲間を悪く思いたくないもんね。
後から、いろいろな面が見れるかも知れないし)