第14章 いつの日か、皆

「ご苦労様。もう自由にしていいわよ」
「はい!失礼しますっ」
サタンが去った後、ルシファーはポツリと口を開いた。
「チョルくんは竜太郎を奪ったけど、今の人は、完全にアスデモス嬢にハートを奪われてたよね」
ルシファーが、恥ずかしげもなくくさいセリフを言ってのけた。
「なにそれ。上手い事言ったつもり?寒いからね」
アスデモスはクスクスと笑う。
「アニーお姉様に手を出したら、あたいが全力でデリートしちゃうんだから!」
「その前に、アニーになんか恐縮すぎて手なんか出せねえっすよ…」
「手出ししようとして、返り討ちにされた悪魔が星の数よりいるって話だよ?
美しくて強い人っていいよねえ。うんうん」
「あのねあなた達、それ本人いる所でする話じゃないからね?
まあ悪い気はしないからいいけど」
「いいんだ」
ルシファーが言った。
「例え返り討ちにせざるをえなかった後でも、モテるというのは気分がいいわ。
自分の気に入った悪魔としかラブラブしない主義なんだけどね」
「そっすか…」
ベルフェーゴルが抑揚のない声で呟いた。
「余裕こいてるっすね」
「フェルだって、かっこいいんだからモテるとは思うわよ?」
「そーだよー、フェルイケメンだよ?」
「いやっす。女以前に、男ですらまともに対応でぎね。
知らない人とかなるべく関わりでぐね」
ベルフェーゴルは無表情のまま首を振る。
「重症ねえ…。対人恐怖症」
「そんなリアルな言い方ダメだよ~、かわいく人見知りって言ってあげようよ」
(あれっ?竜太郎の話はどこへ行ったんだっけ?)
いつのまにやら吹っ飛んでいた、主だったはずの竜太郎の話題。
気付くも今さらなので、あえてスルーを決め込むルシファーであった。

(…勝手に、乗ってきてしもたけど。
近況報告くらいなら‥‥、いいよな‥?)
天上界まで来たところで、チョルくんは背中の上から竜太郎の頭を撫でる。
「悪かね。竜太郎」
『キュー♪』
いいってことよ、と言うかのように竜太郎は軽やかに鳴いた。
「近況報告くらいなら…ち、来たけど…皆、俺んこと覚えとうよな……。
そうじゃなかったら、マジ無駄骨やから……」
別れたのが10年も前なのだ。
自分だけが覚えていて、誰か忘れている可能性もあるのでは、とつい邪推してしまう。
チョルくんは、わしゃわしゃ頭をかきむしった。
「あ゙――――ッ、嫌だし嫌だし!!俺のパボ!!田舎の鶏!!
友達を疑うとか何なん!!マジでないから!!」
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